文鳥とおすすめ飼育本・専門書
トップ画像:書庫をのぞくぽん先生(@comatsu_cotoLi)
文鳥について知識を深めたいと願う全ての飼い主の方に向けて、レベル別におすすめの本をご紹介します。
文鳥大学では鳥に関する書籍を収集し、研究を深めています。新たなおすすめの本と出会った場合には、紹介する本のラインナップを更新していきます。
文鳥様と私
文鳥好きの間では言わずとしれた、日本を代表する文鳥マンガです。「百鬼夜行抄」で有名な今市子(いま いちこ)先生による作品です。
今先生が実際に飼っている「文鳥様」たちと今先生との日々の交流が瑞々しくコミカルに描かれています。
文鳥と暮らす喜びはもちろん、具合が悪そうな様子を見つけた時の背筋の凍るような思いや、回復を祈る緊張の日々、やがて訪れる別離の刻と新たな生命の誕生など、文鳥を飼えば誰もが経験する出来事が、いち飼い主の素直な感触で描かれており、これから文鳥を飼おうという人が、その経験を追体験することができます。
また、ありがちな事故や飼い主の不注意による命の危機など、飼い主としては人に伝えることをためらってしまう経験についても赤裸々に語られており、これが作品全体に緊張感を与え、単なる「ペットとの幸せな生活雑記」と一線を画す重みをもたらしています。
「ある飼い主と文鳥の物語」を読むことで、自分と文鳥との生活をシミュレートすることができます。「ペットの命ときちんと向き合うことができるか否か」を自身に問うことこそ、具体的な飼育知識に先んじて必要なことなのです。飼育書や専門書には、絶対的に「物語」が欠けています。
文鳥は初心者向けの飼い鳥として紹介されることが多いため、「文鳥が初めて飼育するペット」という人も少なくないと思います。
確かに文鳥はかなり扱いやすい部類の鳥ではありますが、非常に繊細な生き物でもあります。25g程度のあまりに軽い体重のため、ちょっとした中毒物質の誤嚥や空気の汚染でも死に至ります。非常に早い代謝のために病気の進行が早く、飼い主が気づく間もない場合もあります。仮に気がついて病院を受診しても、犬や猫に比べて研究が遅れている鳥類の治療手段は限られており、ただ見守ることしかできないことも多いでしょう。
まして初めて動物を飼う人であれば、自分では限界まで気をつけていたつもりでも、文鳥を逃がしてしまったり、思わぬ事故で傷つけたり、不注意で命を奪ってしまうことも大いに有り得ることです。人間は失敗から逃れることはできず、小さな文鳥にとってはその失敗が致命的になります。激しい後悔の念は、生涯忘れることはできないでしょう。
しかしそれでもなお、文鳥と暮らす日々は幸せに満ちています。小さな体で一身に愛を受け止め、そして愛を返す文鳥の姿は、あなたに他の何ものにも変えられない喜びを与えてくれるでしょう。
これから文鳥を飼おうという方は、ぜひ「文鳥様と私」を読んで、これからあなたを待っている様々な出来事を追体験してみてください。そして、その喜びと悲しみの全てを引き受けることになると知った上で、あなたの新しい家族を迎えてください。
初めて飼い主向け
幸せな文鳥の育て方
初めて文鳥を飼う人に向けて必要な知識を分かりやすく解説した本で、飼育書の定番です。
文鳥の飼育書を多数出版し、家庭の飼育技術向上に尽力している伊藤美代子氏が監修しており、小鳥の専門医による医学監修も付いています。
初心者向けの飼育書は様々な出版社が様々なタイトルで出していますが、同価格帯の本の中では抜きん出て充実した内容になっています。一方で、カタい話ばかりにならないように鳥グッズの紹介を混ぜてみたり、文鳥あるあるネタを混ぜてみたりと、編集上の細やかな工夫が施され、この本が一冊目という人でも飽きずに読みこなせるようになっています。情報の質・量と、読み味の軽さのバランスが絶妙です。
初めて文鳥を飼う方はこの本のレベルの知識を理解しておけば、自信を持って文鳥と接することができるでしょう。
中級飼い主向け
コンパニオンバードの病気百科
飼い鳥の病気について解説した書籍の日本代表とも言える本です。
その情報の質と量には定評があり、「鳥の専門医を目指す獣医師はこの本のページ数を言われただけで何の病気が書かれているかを思い出せるようになるまで読み込むのが義務」との噂まであります。
獣医師のような専門家だけでなく、一般的な飼い主も含めて鳥に接する幅広い層に向けて書かれており、医学的な内容を分かりやすく端的に解説しているのが特徴です。
これまで生物学や医学と全く縁が無かった飼い主でも時間をかければきちんと読みこなせるレベルに調整されており、「少しでも多くの人に飼い鳥の医学の知識を普及させたい」という著者の熱い思いを感じます。
よく見られる鳥の病気について、その原因や治療法、予防上の注意点をコンパクトに知ることができます。この本を通読すれば日々の健康観察のレベルが向上し、獣医師へ伝えるべき情報の勘どころを掴むことができるようになるでしょう。飼い主と主治医とのコミュニケーションの質の向上は、愛鳥の受ける医療の質の向上に直結します。
カラーアトラスエキゾチックアニマル(鳥類編)
飼い鳥の体の仕組みや病気について扱っており、上述の「コンパニオンバードの病気百科」と同ジャンルの書籍ですが、こちらは豊富なカラー写真が特徴です。
実際の病鳥の写真や解剖写真などの貴重な写真が多数掲載されており、文章だけでは分からない症状の実際を学ぶことができます。
とはいえ、弱りきった病鳥の姿はショッキングですし、解剖写真はグロテスクです。そういった写真が苦手な方は避けたほうがよいかもしれません。
文鳥―文鳥の飼育・医学・エサ・生態・歴史すべてがわかる
「すべてがわかる」とのタイトルにふさわしく、文鳥を飼育するうえで気になるポイントを網羅的に解説した良書です。2002年に発売された初版と、2006年に発売された改訂版があります。
ケージの選び方や良い飼育環境を構築するための注意点、日々の飼育管理のポイント、ヒナの育て方、エサの特徴と与え方、よくある病気、果ては文鳥と歴史まで。ひとつひとつのテーマがとても良く取材されており、質の高い情報が得られます。
ただ、非常に残念ながら絶版になっており、書店で購入することが難しくなっています。ネットや古書店で入手しましょう。
極めたい飼い主向け
家禽学
哺乳類に比べて鳥類はあまり研究されていませんが、例外的に「家禽」すなわちニワトリを代表とする産業鳥の研究は進んでいます。
本書は、そんなニワトリについて徹底的に産業的な観点から解説した専門書です。「禽舎の気温が何度の時にニワトリは最もムダなく飼料を肉に変換できるのか」「日照時間をどうコントロールすれば飼料の摂取量を最大化し、大きなニワトリに育てることができるのか」「摂取した飼料のうち、どれだけが肉体の形成に貢献せずに排泄されているかについての原子レベルの考察」など、その産業的関心に基づく問いの設定とアプローチは、鳥類についての科学観を拡張するきっかけになるでしょう。
一部、化学の素養、特にイオンについての基礎的な理解がないと苦しい部分があるものの、他の部分は専門的な知識がなくても読みこなすことができるでしょう。
ニワトリについての知見をそのまま文鳥に適用することはできませんが、最も研究が進んだニワトリについて学ぶことで得られる洞察は決して少なくありません。
Feeding Your Pet Bird
英語の本になってしまいますが、とても役に立つのでご紹介します。
「様々な栄養素が鳥の体にどのように作用し、過剰や欠乏を起こすとどんな症状が現れるのか。」「鳥に与えて良い食べ物と危険な食べ物はどれで、その理由は何なのか。」「市販されている主要メーカーのペレットの栄養素はどのように違っているのか。」など、飼い鳥のエサ・栄養についての詳しい情報が手頃にまとまっている良書です。
一般の飼い主向けに書かれており、前提知識がなくても読むことができます。しかしながら書かれている内容は本格的で、飼い主であれば誰もが気になる鳥の栄養バランスや食餌に起因する病気について、しっかりした知識を身に付けることができます。
いまのところ、この本の代わりになる日本語の書籍は出版されていないのではないでしょうか。少なくとも、文鳥大学はまだそのような日本語の書籍を知りません。
日本では自然志向の飼い主が多く、ペレットやサプリメントを一切使わない飼育方法にも根強い支持があると言われています。しかしながら、シードや青菜だけに頼る飼育方法は初心者向きではないかもしれません。鳥の栄養や病気についての深い知識が飼い主になければ、鳥を栄養失調に追い込んでしまいます。
この本の内容は、そのような飼い主の知識需要に応えうるだけのポテンシャルを持っていると思います。出版社の方はぜひ翻訳の企画をご検討下さい。
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