【文鳥防災】基礎知識編―ペット防災の心構え
トップ画像:手のひらで地震訓練に励むさくら先生としるばーちゃん(@hbdOkwDDnNdsagg)
地震学と火山学に詳しい京都大学の鎌田浩毅教授は、2030年から2040年までの間に南海トラフ巨大地震が高確率で発生し、さらに首都直下地震や富士山の噴火の危険性まであると指摘しています。
自然災害のリスクにさらされているのは飼い主も文鳥も同じですが、災害への備えができるのは人間の飼い主だけです。
今回は「文鳥防災」の基礎知識編と題して、大規模災害に備えるための大前提となる心構えを学んでいきます。
ペット防災は飼い主の「自助」が大原則
ペット防災の議論でよく参照されている「人とペットの災害対策ガイドライン(環境省)」では、繰り返し「ペット防災は飼い主の自助が原則」と明言されています。
人であれペットであれ、大規模な災害が発生した直後には、行政の支援(公助)を受けることができません。自分自身の責任で身を守らなければなりませんから、そもそも防災では「自分で自分の身を助ける」という「自助」の側面は大きいものになります。
そして、「ペット防災」では「人の防災」よりさらに自助の役割が重要になります。災害発生時、行政や支援団体の第一目標は「人命の保護」になります。物流網が崩壊した状態で、まず被災地に届けられるのは人間用の食料や水であって、ペット用物資は後回しになります。
その後回しになるペット用物資ですら、やはり犬・猫用の物資がメインになります。鳥、それも文鳥用の餌や薬、ケージ、保温器具などは「高い可能性で届かない」と考えておくのが合理的でしょう。
災害から文鳥を守れるかどうかは、まず飼い主に委ねられているのです。
飼い主が無事でなければ文鳥は守れない
災害から文鳥を守るのが飼い主の責任であるということは、「まず飼い主が無事でなければならない」ということを意味します。
したがって、「ペット防災」について考える以前に「人の防災」について理解を深め、しっかり備えておくことが、文鳥を守るための大前提になります。
文鳥大学では人の防災についてはあまり深く解説できませんが、幸い近年は防災について分かりやすくまとめられた情報を、Web上で無料で手に入れることができます。東京都の「東京防災」などは有名ですね。
残念ながら2021年3月31日に活動終了してしまいましたが、日本気象協会による「トクする!防災」も親しみやすいつくりになっていてオススメです。ちなみに、トクする!防災のマスコットキャラクターは「ヒナんどり」という鳥モチーフになっています。
上記のような情報源をチェックして、飼い主自身が防災意識を高く持つことが、ペット防災の最初の一歩になるでしょう。
文鳥と一緒の「在宅避難」を主軸に備えよう
ペット防災では、地域の小学校の体育館などの、いわゆる「避難所」(指定避難所)で避難生活を送るのではなく、可能な限り自宅や親戚・知人宅などに避難する「在宅避難」を主軸に備えを考えていくことになります。
ペット防災に取り組んでいる地域では、ペットと一緒に避難所に逃げ込む「同行避難」に加えて、その後の生活もできる「同伴避難」を認める避難所がある場合もあります。
「同行避難」とは「ペットを連れて避難所に行くこと」で、「同伴避難」とは「避難所でペットと一緒に暮らすこと」を意味します。ただし、同伴避難といっても「人とペットが一緒の部屋で暮らす」という意味ではありません。「人は屋内、ペットは完全屋外」という生活形態でも「同伴避難」になります・
さて、例えば埼玉県の川越市では、市の指定する避難所にはペットとの「同行避難」が認められていると明言しています。
しかし、市のホームページに「避難所には、ペット用の食料、備品等の備蓄はありませんので、飼養に必要なものは持参してください。」と書いてあるとおり、結局は飼い主の備えが必要ですし、そもそも「同行避難」が認められているだけなので、避難所でペットと一緒に避難生活を送る「同伴避難」はできません。
また、「同伴避難」が可能な避難所でも、「飼い主とペットが同じ空間で避難生活ができる」ことを保証しているわけではないということは、既に解説したとおりです。「同伴」の具体的なあり方は避難所によって様々であるようですが、そこまで万全な管理は期待できないでしょう。
もし「ペットは完全屋外飼養」という避難所であれば、保温の必要がある鳥類の健康を守ることは難しくなります。また、犬や猫と同じ空間で鳥類も管理するということであれば、鳥が襲撃される事故の危険もあるでしょう。仮に「鳥類用の部屋がある」という避難所があったとしても、小型で非力な文鳥が見知らぬ大型のオウム類と一緒に暮らすことは大きなストレスになるでしょう。
こうした避難所の受け入れ体制の問題に加えて、そもそも「災害発生時に鳥を連れて避難所までたどり着けるのか」という問題もあります。
大規模な地震が発生した時にどんなことが起こるのか、想像してみましょう。電車は止まります。道路の損壊や建造物の倒壊、倒れた電柱などで自動車やバスでの移動も困難になっている可能性も少なくありません。台風や津波などの場合、道路が冠水してしまい、徒歩でさえ移動できないこともあるでしょう。大雪になれば、交通網は長期間に渡って機能しなくなります。
人間だけの移動でさえ困難な状況で、繊細な鳥を抱えたまま避難所へ移動しようとするのは、かえって危険になることもあるのです。
一方で、在宅避難ができればこうした問題は一挙に解消します。もちろん、火災や土砂崩れの危険性がある場合は一時的にでも外に避難するべきですが、まず可能な限り在宅避難ができるように備えておくべきでしょう。
自宅が危険な場合でも、「いざという時は鳥と一緒にそっちに行く」という話をしておけば、親戚・知人宅で避難生活ができるかもしれません。
あるいは、自動車に防災グッズを備えておけば、車中避難で急場をしのぐこともできるでしょう。アウトドアが得意な人は、安全な場所でテント泊をするという手段もあり得ます。
このように、文鳥と一緒に避難生活を送る方法は避難所以外にも様々な選択肢があります。こういった選択肢を事前に検討しておくことが重要です。
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