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文鳥の標準体重に関する研究ノート

考え過ぎて虚ろな目になるぽん先生
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トップ画像:考え過ぎて虚ろな目になるぽん先生(@comatsu_cotoLi)

文鳥の標準体重は25g程度だと言われていますが、本当なのでしょうか。

25gよりも遥かに重い子でも、元気で健康に生活している様子はよく見られます。

文鳥の標準体重のについて、少し詳しく研究してみましょう。

文鳥と肥満という講義について、学生の飼い主さんからTwitterにて下記のような疑問を頂きました。

講義では文鳥の標準体重を25g程度として紹介し、肥満を早期発見するための1つの目安としたのでした。

しかし、確かに「文鳥の標準体重は25g程度である」ということが言われている根拠ははっきりとしません。昔からの言い習わしや、飼い主個々人の経験に基づいた数字である可能性があります。具体的なデータを確認してみるべきでしょう。

具体的なデータの調査に先立って、Web上で海外文献をいくつか確認しましたが、海外でも「文鳥の標準的な身長は14cm、体重は25g程度である」とされており、この認識は日本特有のものではないようです。

文鳥の体重に関する具体的なデータ

文鳥の体重について、具体的なデータを見ていきましょう。

しかしながら、文鳥はニワトリのような、人間の手による大規模生産の対象になっている訳ではありません。産業的な動機が無く、文鳥に関する大規模・継続的な統計は行われていません。

したがって、具体的で確かなデータを入手するために、文鳥の体重に関して報告している論文からつまみ食い的にデータを集めるしかないのが現状です。以下、2つの論文からデータを見てみましょう。

1983年の「群飼育箱によるブンチョウの繁殖生産(第1報)」という論文では、文鳥の繁殖生産を効率的に行うための群飼育が、単飼育の場合と比べてどのようなパフォーマンスを示すのかを実験しています。

この実験では、ひとつの群飼箱にオス7羽とメス7羽を入れます。この群飼箱をサイズを変えて3つ用意し、さらに比較のために単飼育箱にオス1羽とメス1羽を入れたものを用意します。つまり、合計でオス22羽、メス22羽の親鳥となる文鳥が用意されたということです。詳しい実験の内容や結果の分析については原文をご覧ください。

さて、親鳥の体重は報告されていないものの、誕生したヒナについては記載があります。これによると、群飼箱1番では1ペアあたり平均4.2羽のヒナが生まれ、ヒナの成長後の体重は24.4gとなりました。同様に、群飼箱2番では1ペアあたり平均5.0羽で体重24.1g、群飼箱3番では平均4.8羽で体重24.3g、単飼箱では5.3羽で23.6gとなったと報告されています。

具体的なヒナの数は報告されていないものの、ひとつの群飼箱では5ペアから6ペア程度が形成されたとのことです。ペアのそれぞれが4羽から5羽のヒナを育てた訳ですから、羽数としては比較的多いといえるでしょう。

この実験の結果を見ると、育ったヒナの体重は概ね24g程度になっています。

続いてもう一つ、2011年の「Male traits and female choice in Java Sparrows: preference for large body size」という論文のデータを見てみましょう。この論文では、オスの文鳥のどのような形質がメスの選好に影響を与えているのか、分かりやすく言えば「どんなオスがモテるのか」について調べるために実験を行っています。関心のある方は、原文をご覧ください。

この実験では6羽のオスと6羽のメスが実験に参加しており、この子たちの体重が報告されています。それによると、オスの平均体重は26.58gで、最も軽い子は24.20g、最も重い子は28.47gでした。メスの平均体重は25.09gで、最も軽い子は23.40g、最も重い子は27.00gでした。

この結果から、メス文鳥の方が体重が軽い傾向が見られ、論文でもその点に言及しています。ただし、統計的な有意差は無く、偶然の可能性もあります(そもそも6羽ずつしかデータが無いので、統計的な議論をするのは難しいですが)。

さて、ここまでにご紹介した2つの論文のデータから考えると、「文鳥の標準体重25g」はそれなりに実態を捉えた数字であるように考えられます。仮にオスとメスの体重に本当に性差が存在したとしても、オスで27g程度、メスで25g程度ですから、「文鳥の標準体重25g」としておいても不自然ではありません。

文鳥の体重についての考察

論文からのデータに基づく限り、「文鳥の標準体重25g」と言って問題なさそうであることが分かりました。

では、「平均25gと言われてますが、うちの歴代の子、かれこれ40羽くらいの体重を考えると、26〜27くらいが平均の様な気がします。」という飼い主の感覚が間違っていたということなのでしょうか?

ここで「飼い主の感覚が間違っている」と断言するのは危険です。現代の人間には科学的な装いのものを実践家の経験より偏重してしまう傾向があるようですが、文鳥と生活を共にし、文鳥の健康状態に最も関心を持っているのは第一に飼い主であり、研究者ではありません。科学者や研究者は「特別な訓練によって真実を知っている人々」ではなく、実践家と同じ洞察力と思考力を持つただの人間です。「ローカル・ナレッジ(現場の知識)には、それなりの根拠があるのではないか」と考える慎重さを持ちましょう。

さて、「26gから27gぐらいが平均体重ではないか」という飼い主の感覚が正しいとした場合、論文のデータが支持する「文鳥の標準体重25g」との矛盾はどのように説明できるでしょうか。

以下、3つの仮説を考えてみましょう。

仮説1:挿し餌で育てられた文鳥は大きく育つ

「群飼育箱によるブンチョウの繁殖生産(第1報)」で体重測定されたヒナは全て親鳥によって育てられています。このヒナ達が成長した結果、平均体重は24g程度になったのでした。

対して、人間の家庭で育てられる文鳥は、人間による挿し餌で育てられることが多いでしょう。たくさんの文鳥を飼育している飼い主は親鳥にお世話を任せることも多いでしょうが、親鳥の育雛が下手な場合は飼い主が介入して挿し餌で育てるはずです。したがって、家庭で育つヒナは「育雛の上手な親鳥、あるいは人間により育てられる」傾向が強いと言えます。

人間がヒナに挿し餌を行う場合には挿し餌の内容や分量に細かく気を配り、頻度も計算に入れて行います。このため、ヒナは栄養不足の制約を受けることなく大きく成長することが可能となり、野生の文鳥や研究施設の文鳥よりも家庭の文鳥の平均体重の方が重くなるという偏りが生じている可能性があります。

仮説2:低ストレスで育てられた文鳥は大きく育つ

暑さや寒さなどの環境的なストレスを受けた文鳥は、体温調節のためにエネルギーを余計に消耗します。したがって、食べたエサから獲得した栄養のうち、体を成長させるために使える分が減ってしまいます。

また。心因的なストレスを受けた文鳥は食欲不振を起こしたり、食べたエサの消化吸収のパフォーマンスが悪化したりします。したがって、成長のために必要な栄養を摂取しにくくなってしまいます。

さて、「群飼育箱によるブンチョウの繁殖生産(第1報)」では群飼育というストレスフルな環境下で、できるだけパフォーマンスを落とさずに文鳥を生産することを目標とした実験でした。結果、その環境で育ったヒナ達の体重は24g程度でした。

「Male traits and female choice in Java Sparrows: preference for large body size」で体重測定された合計12羽の文鳥たちがどのような環境で育ったのかは不明です。ですが、「1983年に行われた群飼育実験環境」よりは「2011年の研究施設での一般的な飼育環境」の方がストレスは少ないと考えるのが自然です。彼らの体重はオスで27g、メスで25gでした。

そして、「26gから27gぐらいが平均体重ではないか」と感じている飼い主による飼育環境は、最もストレスが少ないでしょう。家庭で飼育される文鳥は家族の一員として尊重され、その生活環境に細心の注意が払われるためです。

このように、ストレスの強さを軸に分析すると、「高ストレス環境の文鳥は体重が軽くなり、低ストレス環境の文鳥は体重が重くなる」という仮説とデータが整合していることが分かります。

仮説3:家庭の文鳥は遺伝的に大きく育つ

文鳥のヒナを購入する際には、元気で体の大きい子を選ぶように、多くの飼育書でアドバイスされています。

販売用の文鳥を育てる繁殖場でも、大きな文鳥が売れることは分かっています。親鳥となる文鳥を選別する際にも、体の大きな子や、大きなヒナを産んだ実績のある子が好まれるでしょう。

対して、研究施設では上記のような選好は生じません。特殊な目的が無い限り、研究者が知りたいのは文鳥という種の自然な姿ですから、人間の恣意の介入は避けられるでしょう。

上記のような、文鳥に関わる人間たちの意図により遺伝的な淘汰が行われ、人間の家庭で育てられる文鳥は体が大きくなる遺伝子を持つ子が多くなっていると考えられます。

いまの文鳥大学には上記の仮説の真偽を突き止めるための資金も設備もありませんが、今後の課題として、ここに公開します。

また、飼い主の皆さんは「標準体重25g」という常識にあまりとらわれることなく、何gであろうと「その子にとっての健康な体重」を把握することが重要だという点に注意しましょう。

その子の身長や体格、年齢、季節によってさえ、健康な体重は異なるものです。「標準体重」は、病気による痩身や肥満を発見するためのひとつの目安になることは事実です。ただし、体重だけで痩身や肥満が診断される訳ではありません。肉付きの状態や他の症状を勘案して、健康な状態なのか病的な状態なのかが慎重に判断されます。

にも関わらず「標準体重でなければ健康ではない」となってしまっては、不適切なダイエットや増量によって、健康体重であったはずの愛鳥を飼い主の手で苦しめることになりかねません。

25gで健康な子は多いでしょうが、25gで痩せ過ぎだったり太り過ぎだったりする子も確実に存在しています。体重管理の第一は愛鳥の健康体重を知ることであり、25gというのは一般論における目安に過ぎないことを、ぜひ忘れないようにしましょう。

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