文鳥とアボカド中毒
トップ画像:アボカドの形になるぽん先生(@comatsu_cotoLi)
アボカドは文鳥にとって猛毒となる果物です。
ペルシンという物質が原因であると考えられているものの、なぜそれが害を及ぼすのかという化学的な仕組みは良く分かっていません。
猛毒であるにも関わらず鳥は好んでアボカドを食べようとするため、放鳥時には決して目を離さず、調理中などに放鳥しないように気をつけましょう。
アボカド以外の文鳥が食べてはいけない食品については、下記の講義をご覧ください。
アボカドの果実を含むあらゆる部位に含まれている「ペルシン」が原因で、鳥は中毒を起こすと考えられています。
ペルシンは殺菌作用のある有機化合物で、人間以外の多くの動物にとって有毒です。ペルシンは比較的最近になって初めて分離に成功したという事情もあり、人間には中毒を起こさない理由をはじめ、その化学作用の多くは解明されていません。
日本のスーパー等で一般的に販売されているアボカドはグアテマラ系の「ハス」という品種のアボカドです。このグアテマラ品種はセキセイインコとカナリアの研究で毒性が証明されています。
多くの動物のペルシンの致死量はほとんど分かっておらず、文鳥もその例に漏れません。
ただし、「セキセイインコではアボカドの果実1グラムを摂取しただけでも動揺・興奮状態に陥って毛引きを始め、9グラムを摂取すると48時間以内に死亡する」と記載している文献もあり、少量でも深刻なダメージを負うことになると考えられています。
アボカド中毒の症状
アボカドを摂取してから9時間から15時間以内、遅くとも24時間以内に中毒症状を発症することが多く、発症してからは短時間で死亡します。
アボカドを摂取した鳥には心筋壊死や浮腫、肺水腫などの深刻な症状が起きることが知られています。
少量摂取の場合には、床におりて沈うつ状態になり、食欲不振や膨羽、呼吸困難などの症状を見せたあと、回復することがあります。一方で、大量に摂取した場合には急激かつ重度の呼吸困難を起こして死亡します。
アボカド調理の際に生じる煙に関する注意
Did Avocado Fumes Cause Bird’s Death?という記事において、アボカドの調理に関する気になる事例が報告されています。
カリフォルニアで2羽シロハラインコを飼育している女性が自宅でアボカドの天ぷらを作ろうとしたところ、2羽が急に苦しみ始めました。すぐに病院に連れていき、処置を受けたものの1羽は死亡してしまいました。
死亡した1羽について検死が行われ、重度の肺水腫と脳うっ血を起こしていたことが分かり、獣医は有毒な煙の吸入による病変ではないかと考えます。
鳥に深刻なダメージを与える有毒な煙といえば、フッ素コーティングされた調理器具の使用によるフッ素ガスや、タバコの煙が有名です。
参考:文鳥とポリテトラフルオロエチレンガス中毒、文鳥とタバコの中毒
異変が起きた際に飼い主の女性が料理中であったことから、最初はフッ素ガスが原因ではないかと考えられました。
しかしながら、この女性はフッ素コーティングされた調理器具を一切使わないようにしていたことが分かりました。さらに、当時シロハラインコはキッチンの隣のリビングに居ましたが、女性は調理の際には換気のために勝手口のドアを開け放っており、この方法で4年間のシロハラインコ達との生活で何も問題は起きていなかったと説明します。
結局、確定的な原因を突き止めるには至らず、獣医は飼い主の女性に対して「キッチンで調理の際に生じる様々な煙は、慢性的な大気汚染から鳥に有害な作用を及ぼすことがあるため、ケージの位置をキッチンからもっと離すように」という一般的な指導を行います。
さて、上記の事例ではアボカドを揚げる際に生じた煙が特に有害であったかどうか、はっきりしたことは分かりません。しかし、体重が160グラム程度(文鳥の6倍から7倍の体重)もあるシロハラインコの命を奪っていることは、重く考えるべきです。
ペルシンが鳥にダメージを与える機序がよく分かっていない以上、飼い主としては万全を期して「アボカドの調理で発生する煙は有毒かもしれない」と考えて行動するのが合理的です。
もちろん、アボカドでなくとも、キッチンで生じる様々な煙やガスが鳥にとって有害であることは分かっていますから、ケージの設置場所をキッチンから十分に離し、換気もしっかり行うようにしましょう。
参考:文鳥のケージ設置場所
アボカド中毒の予防
ペルシンの化学作用がよく分かっておらず、アボカド中毒には解毒薬がありません。
中毒症状が迅速かつ重篤なものであるという特性からも、予防がもっとも重要になります。
アボカドは有毒なのですが、鳥は好んで食べようとします。放鳥中は目を離さないようにして、食事中のダイニングやキッチンで放鳥しないように徹底します。
アボカドを調理した包丁やまな板、お皿などはよく洗ってから使用するようにしましょう。
ケージの設置場所をキッチンから遠ざけて、調理中には換気をしっかり行うことも重要です。
もし愛鳥がアボカドを摂取してしまった場合は一刻も早く病院を受診し、そ嚢洗浄などの処置を受けなければいけません。摂取したアボカドの消化過程が進む前に処置することができれば、命を救うことができます。
参考文献
書籍
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