文鳥と卵塞(卵詰まり)
トップ画像:卵が詰まる様子を再現するぽん先生(@comatsu_cotoLi)
メスの文鳥で最もよく起こる繁殖関連の病気が卵塞です。卵詰まりや難産と呼ばれることもあります。
卵をスムーズに押し出すことができず体内に留まってしまう病気です。
早く対処しないと死に至ることもある危険な状態ですから、発情中の文鳥は特に注意して観察してあげる必要があります。
初めて産卵する文鳥や高齢の文鳥は、健康であったとしても卵塞を起こしやすくなっています。過発情や持続発情によって過剰産卵になっている文鳥も、卵塞を頻発します。
卵が大きすぎるから詰まるというイメージがありますが、実は過大卵による卵塞はあまり見られません。卵の大きさよりも、柔らかすぎる卵や変形した卵の方が、筋肉の運動によって上手く押し出すことができないため、卵塞の原因になります。
このほか、栄養バランスの不適切や運動不足による筋力不足や、低カルシウム血症などによる神経障害、不適切な飼育環境やストレスによるホルモン失調なども卵塞の原因になります。
卵塞の症状
巣ごもりをして産卵する仕草は見せるものの、産めないまま辛そうにしています。
羽を膨らませてうずくまり、食欲不振や便秘を起こします。エサを食べずに、水ばかり飲んでいる様子が見られるでしょう。
呼吸の間隔が短くなり、イキミによる声漏れが聞こえることがあります。
低カルシウム血症や、卵による神経・脊椎の圧迫により、脚に麻痺が生じることがあります。止まり木に止まれなくなって床にうずくまっていたり、跛行したりするでしょう。
卵を出せない状態が続くと、確実に死亡します。
また、卵塞が発症しても無症状のこともあります。それまで無症状だったのに突如死亡したというパターンもあるため、発情中のメスの文鳥は特に注意して見守る必要があります。
卵塞への対処
発情中のメスの文鳥は毎日体重を計り、卵の有無を確認しましょう。お腹を触ることによって卵が分かる場合もありますが、軟殻卵が形成されてしまったときは触っても判然としないでしょう。
卵は排卵後24時間以内に産卵が行われます。24時間経っても卵が出てこない場合、あるいはイキミなどの卵塞症状が見られる場合は、異常が生じている可能性が濃厚です。
産卵中に卵塞の症状が認められた場合、すぐに獣医師のところへ連れて行って処置を受けるか、保温して短時間様子を見るかのどちらかを選択することになります。
卵が詰まった状態は大変危険です。激しい体力の消耗に加えて、血管の圧迫による血液循環の阻害やフンの排泄阻害、輸卵管の炎症などを起こし、すぐに状態が悪化して死亡します。
したがって、卵塞を起こした場合はとにかく早く獣医師のもとへ連れていき、卵を出してもらわなければなりません。下手に飼い主が指で押し出そうとしたりすると、周囲の臓器を傷つけたり、卵を体内で割ってしまったりして危険です。
もし早期に卵塞を発見できた場合、保温することによって文鳥が自力で卵を出せることがあります。薄暗く静かな場所で、文鳥が翼を広げて暑がる程度の温度で1~2時間保温すると、自力で出産できるかもしれません。この時の温度については、「35度前後」とする文献もあれば、「30度~32度」とする文献もあります。
1~2時間経っても出産できない場合は、すぐに獣医師の処置を受ける必要があります。温度を25度~30度程度まで下げて、できるだけ早く病院へ行きましょう。
卵塞の予防
まずは栄養バランスの良い食餌と適切な飼育環境を整え、規則正しい生活を送ることが重要です。
栄養では、カルシウムの不足に注意しましょう。カルシウムは正常な卵の形成に必要なだけではなく、筋肉を正常に動かすために必要な栄養素でもあります。卵の形成異常よりもカルシウム不足による筋肉運動の障害の方が卵塞を誘発すると述べている文献もあります。
ボレー粉などのカルシウムを含む副食をしっかり与えましょう。また、カルシウムの吸収に深く関与しているビタミンDが欠乏しても、カルシウム不足と同様の状態になってしまいます。ビタミンDはガラスを通過していない日光を浴びることで合成されますから、窓を開けた日光浴の時間を取ると良いでしょう。カルシウムおよびビタミンDの欠乏を防ぐ方法は下記の講義でそれぞれ詳しく検討しています。
また、飼育環境と生活リズムをしっかり整えましょう。
急な温度変化、特に寒冷化は卵塞の原因になることが指摘されています。ケージを窓のすぐ近くにおくと温度変化が大きくなりやすいため、ある程度遠ざけるようにしてください。
そのほか、騒音や振動によるストレスや不規則な生活リズムはホルモンバランスを崩し、これも卵塞の原因になります。人の生活の動線から少し離れた場所で、夜は暗く静かにできる場所にケージを置きましょう。
ケージの設置場所については下記の講義で解説しています。
参考:文鳥のケージ設置場所
さらに、運動不足によって産卵のために必要な筋力が不足することがあります。メスの文鳥は産卵期の過食から脂肪肝を起こしやすいということも考えると、放鳥の時間をとるだけでなく、そもそもケージを十分に大きなものにして、運動不足を予防すると良いでしょう。
参考文献
書籍
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