文鳥と鉛中毒症
トップ画像:箱入り文鳥のゴエ先生(@zrloisirs)
鉛が鳥の体に蓄積されると、赤血球の破壊や神経症状、そして消化器系の障害を起こし、死亡することもあります。
放鳥時に目を離していると、気が付かない間に鉛を摂取してしまうかもしれません。
鉛中毒性は発症すると進行が急速であるとする文献もあり、早期に異変を見つけて病院を受診し、解毒剤の処方を受けられるか否かが、その子の生死や後遺症の有無を分けることになります。
放鳥時には目を離さず、それらしい金属製品に触れた後に異変が見られた場合は、即応できるようにしましょう。
鉛中毒症の症状
鉛はまず赤血球に影響をもたらし、溶血(赤血球が壊れること)を生じます。壊れた赤血球からは赤いヘモグロビンが溶出し、緑色のビリベルジンが作られます。このビリベルジンが便や尿に排泄されるため、濃緑色便や黄色~緑色の尿酸が見られるようになります。
ビリベルジンへの還元が間に合わないほど大量の溶血が生じた場合、ヘモグロビンがそのまま尿中に排泄され、フンが赤~ピンク色になることがあります。ここまで重篤な溶血が生じると、予後が不良であることが多くなります。
また、鉛は神経を強く障害します。迷走神経の障害による消化器の弛緩性麻痺が顕著で、胃や腸、そ嚢の筋肉の緊張が弱くなって弛緩します。このため、食滞や便秘を起こし、これに付随して食欲減退、廃絶、吐出、嘔吐の症状が見られるでしょう。
参考:文鳥と食滞(そ嚢停滞)
消化管運動の停止は鉛の排泄を遅延させるため、中毒症状をさらに重くします。
また、疝痛を起こした場合、活動量の低下や膨羽、前かがみ姿勢、腹部を蹴るなどの様子が見られるようになります。
鉛は末梢神経も障害します。翼の下垂が起き、ふるえや頻繁な伸びを行うようになります。脚の神経が障害されると麻痺が生じ、跛行、脚の挙上、開脚姿勢、握力低下による止まり木からの落下などが起こります。
鉛が中枢神経まで障害すると、興奮やパニック、沈うつなどが見られ、重篤な場合は痙攣を起こした後、死亡します。死亡にまで至らなかった場合でも、後遺症として残ります。
このほか、腎不全を起こして多尿や脚麻痺を起こすことがあります。多尿を起こすと脱水状態になるため、水を頻繁に飲む様子が見られます。
参考:文鳥と腎疾患
鉛中毒性はいちど発症すると進行は急速であるとする文献もあります。鉛中毒症を起こしてしまった場合、とにかく早く病院で解毒剤の投与を受けることが重要になります。
鉛中毒症の予防
文鳥が鉛を含む物を舐めたり咬んだりしないようにすることが重要です。
鉛が含まれている可能性のあるものを具体的に挙げると、下記のようになります。
- 釣りの重り
- カーテンウェイト
- 輸入雑貨
- ベルの鳴子
- 古い塗料
- ハンダ
- 漆喰
- 潤滑油
- バッテリー
- 電球の基部
- ワインやシャンパンのボトル上部のホイル
- 汚染されたカトルボーン
- 五徳
- クリスマスオーナメント
- リノリウム
- アンティーク調の装飾品や服の飾り
- ステンドグラスの接着部
- 白鑞の製品
- セラミックス
- 硬貨
- 有鉛ガソリンの煙(クラシックカーは有鉛ガソリン車の可能性あり)
このように、鉛は様々な物に使われているため、鉛を使った製品を完全に排除することは現実的ではありません。
したがって、「ながら放鳥」をやめて、文鳥から目を離さないようにすることが重要です。
また、同じ重金属中毒である亜鉛中毒症にも気をつけましょう。
参考:文鳥と亜鉛中毒症
参考文献
書籍
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