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文鳥が食べているシードの本当の栄養に関する研究ノート

背中に顔をうずめるぽん先生
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トップ画像:難問に頭を悩ませるぽん先生(@comatsu_cotoLi)

文鳥が食べているシードは精白されていない状態です。

しかし、シードの栄養素を知るためにわたしたちが利用できる情報は、精白後の値になっています。

文鳥が食べているシードの本当の栄養価はどのようになっているのでしょうか?

文鳥が主食とする主なシード、つまり、アワ、キビ、ヒエ、カナリーシードの4種類の穀物種子の特徴と成分について、文鳥の主食となるシードの特徴と成分という講義で詳しく検討しました。

上記の講義では各シードの成分表を、主に日本食品標準成分表2015年版(七訂)を使ってまとめました。しかし、この成分表はあくまで人間が食べるものを対象に作成されたものですから、アワ、キビ、ヒエは20%から30%程度精白された後の成分(歩留まりが80%から70%ということ)になっており、カナリーシードに至っては掲載されていません。

文鳥に与えられるシードは基本的に皮付きの状態です。この皮付きシードを、文鳥は特徴的なクチバシでついばみ、楽しく殻を剥いて食べるのです。つまり、文鳥が食べるシードは、「玄米」ならぬ「玄アワ」「玄キビ」「玄ヒエ」といった玄穀の状態であり、精白後の成分表ではその正確な栄養価を知ることができません。

精白によってどの程度の栄養価が失われているのかを知ることができれば、玄穀の栄養価についても見当をつけることができそうです。

農研機構の研究

雑穀の栄養素が精白によってどの程度の影響を受けるのかについての貴重な研究のひとつに、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(略称:農研機構)によるものがあります。

農研機構がホームページで公開化している「ひえ、あわ、きびの精白によるミネラル及びポリフェノール含量の変動」では、アワ、キビ、ヒエの3つの雑穀についてそれぞれ2銘柄を対象とし、主要なミネラルとタンパク質、ポリフェノールの精白による成分変化を分析しています。

研究の詳細については原文をご参照いただくことにして、今は私達の関心にしたがって、当該文献の表1を引用します。

上記の表では、玄穀の状態から、10%刻みで精白を進めていくと栄養価がどのように変化するのかを一望できます。

表中の用語を解説すると、「搗精歩合」とは精白後の穀物の玄穀に対する重量の割合のことです。つまり、「搗精歩合70%」とは、穀物の表層部を重量で30%削り、70%が精白後として残っているという意味になります。

また、元素記号についてCaはカルシウム、Kはカリウム、Mgはマグネシウム、Feは鉄を意味しています。

農研機構の研究についての考察

上記の表では成分の含有量そのものが記載されていますが、いま私達が問題にしているのは「精白によってどの程度の栄養価が失われているのか」ですから、成分は玄穀に対する残存率であらわした方が分かりやすくなります。

以下、それぞれの穀物について個別に見ていきましょう。

ヒエの成分残存率

下記の表は、玄穀の成分を100%とした時に、精白後の成分が何%になっているのかを一覧できるようにしたものです。

ヒエの玄穀に対する成分残存率

搗精歩合 Ca K Mg Fe タンパク質 ポリフェノール
ひえ軽米在来
玄穀
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
90%
100.0%
66.0%
57.4%
75.0%
97.0%
53.5%
80%
85.7%
47.2%
48.1%
43.8%
87.1%
37.1%
70%
85.7%
49.1%
37.2%
43.8%
80.2%
32.8%
ひえ達磨
玄穀
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
90%
100.0%
77.2%
87.4%
0.0%
92.5%
54.7%
80%
85.7%
67.7%
79.2%
57.1%
86.0%
41.5%
70%
85.7%
50.9%
53.6%
42.9%
82.8%
32.4%

いま、ポリフェノールは無視してミネラルとタンパク質に集中しましょう。

すると、カルシウム(Ca)とタンパク質は搗精歩合70%でも8割程度が残存しているのに対して、カリウム(K)とマグネシウム(Mg)そして鉄(Fe)はおおむね半分になってしまっていることが分かります。

したがって、文鳥はヒエを食べることにより、標準成分表の2倍程度のカリウム、マグネシウム、鉄を摂取している可能性があります。

アワの成分残存率

ヒエと同様に、アワの残存率も見てみましょう。

アワの玄穀に対する成分残存率

搗精歩合 Ca K Mg Fe タンパク質 ポリフェノール
あわ大槌10
玄穀
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
90%
88.9%
76.7%
98.6%
96.6%
96.1%
86.6%
80%
88.9%
59.4%
86.2%
89.7%
90.3%
81.1%
70%
55.6%
61.6%
67.6%
72.4%
83.5%
77.3%
あわ虎の尾
玄穀
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
90%
90.0%
109.7%
89.7%
108.3%
95.5%
84.9%
80%
80.0%
107.9%
72.4%
79.2%
88.6%
70.8%
70%
70.0%
82.8%
58.6%
58.3%
80.7%
61.1%

アワの残存率は、ヒエとは少しことなる傾向を示しています。

搗精歩合70%でタンパク質の残存率は8割程度で、ヒエと同程度です。しかし、他のミネラルは6割から7割程度残存しており、カルシウム(Ca)を除けば約半分の栄養価になってしまうヒエよりも高い残存率になっています。

したがって、文鳥はアワを食べることにより、標準成分表の1.25倍のタンパク質と、1.4倍から1.7倍程度のミネラルを摂取している可能性があります。

キビの成分残存率

最後にキビの残存率を見てみましょう。

キビの玄穀に対する成分残存率

搗精歩合 Ca K Mg Fe タンパク質 ポリフェノール
きび釜石16
玄穀
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
90%
85.7%
96.8%
64.0%
65.5%
98.1%
60.9%
80%
71.4%
52.4%
32.0%
31.0%
89.4%
54.9%
70%
64.3%
55.6%
20.0%
20.7%
84.6%
40.7%
きび田老系
玄穀
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
100.0%
90%
78.6%
85.5%
61.3%
47.8%
98.0%
53.8%
80%
71.4%
75.1%
43.8%
26.1%
86.1%
45.5%
70%
71.4%
46.6%
33.1%
8.7%
85.1%
41.3%

キビの残存率は、ヒエを極端にしたような傾向を見せています。

つまり、搗精歩合70%でカルシウム(Ca)の残存率が7割、タンパク質の残存率が8割強と高い残存率を示す一方で、カリウム(K)は5割、マグネシウムは(Mg)は3割、鉄に至っては2割にまで栄養価が減少しています。

ひるがえって考えると、文鳥が食べるキビの栄養価は過小評価されている可能性があるということです。つまり、標準成分表の値に対して玄キビの栄養価は、カリウムで2倍、マグネシウムで3倍、鉄で5倍に達する可能性があるのです。

今後の課題

農研機構の研究により、主要なミネラルの残存率と、シードごとの傾向の違いについて貴重な情報を得ることができました。

しかし、他のミネラルについての手がかりはありません。

また、タンパク質についても、詳細なアミノ酸の組成値を知ることができれば、文鳥にとってよりよい食生活を考える大きな手がかりになります。

文鳥のシードからのビタミン補給についてはもともと少量であるため、ビタミンについては優先度が下がるものの、他のミネラル、そしてアミノ酸についての情報を得ることが、今後の課題となります。

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