文鳥の主食となるエサの基礎
トップ画像:エサの気配を察知するぽん先生(@comatsu_cotoLi)
文鳥を初めて飼う飼い主は、「そもそも文鳥の主食って何?」というところからしっかり学んでいく必要があります。
ここでは、文鳥の主食として一般的に利用されている「シード」と「ペレット」について、その基礎を解説します。
それぞれのエサの違いを理解して、適切に扱える飼い主になりましょう。
シード
初めて鳥を飼う人は「鳥のエサ=シード」という認識である場合も多いでしょう。
一般に、文鳥に与えるシードはアワ・キビ・ヒエ・カナリーシードなどを混ぜた混合シードになります。これら主要4種の特徴については下記の講義もあわせてご覧ください。
混合シードに配合されている穀物の種類や配合比率は商品によって様々です。例えば、国内の鳥類飼料販売で実績のある「キクスイ」および「黒瀬ペットフード」を例にとって見てみましょう。
キクスイが販売する「文鳥専科」という商品には、主要4種に加えて炒り黒ゴマや青米など、合計11種類のシードが配合されています。
一方、黒瀬ペットフードが販売する「マニア 文鳥」では、シード類に加えて更にボレー粉や野菜顆粒、フルーツ顆粒なども配合され、より広範な栄養素をカバーしようという意図がうかがえます。
上記のように様々な種類のシードを配合したものは、それぞれの販売元が文鳥用に工夫して商品化したものですから、まだ文鳥の飼い方がよく分かっていない飼い主でも、比較的失敗なく扱うことができるでしょう。
しかし、「ビタミン剤やサプリメントを併用する」「文鳥の成長段階や体調、時季に応じて配合比率をコントロールしたい」「マイナーなシードや、よく分からないものは与えたくない」という飼い主にとっては、もっとシンプルなシードの方が好まれます。下記のものは、キクスイはアワ・キビ・ヒエ・カナリーシードの主要4種だけを配合した混合シードになっています。黒瀬ペットフードはアワ・キビ・ヒエの3種類だけを配合したもので、このまま利用すればダイエットに好適です。
配合比率をコントロールするためにはそれぞれのシードを単体で用意する必要がありますが、もちろんバラでの販売も行われています。例えば、「カナリーシードだけは自分で調節したい」という飼い主であれば、下記のものを利用できます。
もっとこだわる飼い主であれば、カナリーシードだけでなく必要なシードを全て単体で購入して独自の配合にすることも可能です。ただし、比率の管理が大変で購入したシードも古くなっていってしまいますから、よほどのこだわりがある場合や特別な目的がある場合を除いて、そこまでやる必要はないでしょう。
ところで、様々な混合シードを比較していると「殻付き」のものと「殻なし」のものが販売されていることに気が付くでしょう。殻なしのシードは「むき餌」と呼ばれており、文鳥がシードを食べても殻が残らず、飛び散ることも無いため、掃除の負担が少なくて済みます。
しかしながら、文鳥のクチバシはシードの殻を剥くのに最適な太いピンセット型になっています。殻を剥く行為それ自体が楽しみであり、ストレスの解消になっていると考えられています。
参考:文鳥のクチバシの基礎知識
殻付きの方が栄養も良好で、長期間保存可能であるため、文鳥のエサとしては殻付きの混合シードを購入しましょう。むき餌はヒナの挿し餌を作る場合などの特別な目的を持って利用するために販売されているものです。
シードを利用する際に注意しなければならないのは、シードからだけでは文鳥の健康維持に必要なビタミンやミネラルが不足するということです。
必ず副食として野菜やボレー粉などを添えて、不足する栄養素を補う必要があります。野菜については、下記の講義も参考にしてください。
また、混合シードの偏食についても注意を要します。例えばアワ・キビ・ヒエ・カナリーシードの主要4種の混合シードを与えると、多くの文鳥はカナリーシードを最も好みます。このため、混ぜてあるシードの中からカナリーシードだけを選り分けて食べる偏食を行う子も少なくありません。
カナリーシードだけを食べるのは肥満の原因になりますから、バランス良く全ての種類のシードを食べてもらう必要があります。このため、シードを与える際は1日で食べ切れる量だけを与え、カナリーシードだけではお腹が空くようにします。
ペレット
文鳥の主食としてもうひとつ重要なのがペレットです。
ペレットは、必要な栄養素をそれだけで全て摂取できる総合餌として製造・販売されているエサで、メーカーによって配合や味が異なります。
海外では昔から鳥の主食としてペレットが一般的に利用されています。日本は自然志向の強い飼い主が多く、ペレットに抵抗のある人が多かったようですが、現在では比較的普通に利用されています。
ペレットの利用については様々な考え方がありますが、ペレットの普及によって飼い鳥の栄養失調が減少したことや、ペレット食への切り替えさえうまく行けばその後の扱いが簡単なこと、病院で療養食として処方されることがあることなどを勘案すると、少なくなくとも初心者のうちはペレット食を取り入れた方が無難であることは事実です。
ペレットは、ひと粒ごとに微量栄養素も含めて必要な栄養素がバランスよく配合されており、シードのような偏食の問題を回避することができます。また、シード食の文鳥では日光浴によって生成しなければいけないビタミンDも、ペレットであれば食餌から摂取することができたりします。
参考:文鳥とビタミンD欠乏症
要するに、飼い主の飼育管理が多少雑であっても、最低限ペレットさえ食べていれば致命的な栄養失調を回避することができるのです。もちろん、自らすすんで愛鳥の飼育管理を雑にしようという飼い主は存在しないと思いますが、いくら気をつけていても初心者のうちは意図せずして文鳥に負担をかけてしまうことがあるものです。「とりあえず栄養面は大丈夫」というペレットの特徴は、飼い主の経験不足をカバーし、文鳥の命を守るために非常に有益です。
また、シードと違って殻が残らないため、食事量の把握がしやすいほか、衛生管理でもペレットが有利です。湿気の多い時期は、シードの殻は特に不衛生になりがちですから、念入りに清掃する必要があるのです。
一方で、ペレットこそ「正体がよく分からないもの」の典型です。どのような原料が使われ、どのような工程を経て加工され、保存処理が施されているのか明確ではありません。人間用の加工食品は国家的な規制が行き届いており、一般に販売されている食品は一定の品質保証がされていますが、鳥用の食品にはそのような規制はありません。
したがって、ペレットを利用する際は、実績のあるメーカーが製造しているものを購入するのが無難です。少なくとも、原料や成分がきちんと表示してあるものを利用しましょう。
メーカーごとのペレットの違いについてはまた別の講義で探求することとして、今回は有名所を列挙するに留めましょう。下記の挙げるペレットはいずれも実績がありますから、初心者の飼い主はとりあえず下記の中から選択すると失敗がないでしょう。
国内で文鳥用に利用されているペレットとして一般的なのは、ハリソン(Harrison)やラウディブッシュ(Roudybush)、ズプリーム(ZuPreem)などの海外メーカーが製造するものです。製造元は海外ですが、いずれも国内のペットショップなどで簡単に入手することができます。
国内ではシードの項でも登場した黒瀬ペットフードが販売するペレットが有名です。
ペレットを与える場合に最も苦労するのが、シード食からペレット食への切り替えでしょう。ペレットでは「殻を剥く楽しさ」を感じられないためか、ペレットを喜んで食べる文鳥は少数です。シード食で育った文鳥は、訓練しないとペレットを食べるようにならないことが多いでしょう。
無理にペレット食へ切り替えようとするのは、深刻な栄養失調やストレスの原因になるため、様々な工夫を凝らしつつ時間をかけて慣らしていく必要があるのです。ペレット食への切り替えはそれ自体がひとつの重要なテーマですから、別の講義で詳しく学ぶことにしましょう。
参考文献
書籍
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