病気の文鳥の看護方法
トップ画像:単に眠いだけのぽん先生(@comatsu_cotoLi)
文鳥の具合が悪そうな時は、早く病院を受診するのが一番です。
しかし、曜日や時間帯によっては、どうしてもすぐに病院に連れていけない場合もあるため、家庭での病鳥の看護方法を知っておくことは必要です。
下記に紹介するポイントをしっかり抑えて、愛鳥の回復をサポートしてあげてください。
愛鳥の具合が悪そうな時、まず考えるべきは早く病院を受診することです。
鳥の病気では初期症状がほとんど見られないものもあります。飼い主が気づいた時には既に病状が重度に進行しているということもあります。
したがって、鳥が見せる具合の悪そうな様子を軽視してはいけません。
鳥の病気の一般症状としては、膨羽や傾眠、食欲不振、活動量の低下、沈うつ状態などが挙げられます。嘔吐や下痢、食欲廃絶などが見られる場合は、かなり体調が悪くなっていると考えて良いでしょう。
上記のような症状が見られたとき、すぐに病院に連絡をとることができ、診察を受けることができれば良いのですが、曜日や時間帯によっては当日中の受診が難しいこともあるでしょう。
そういった状況では家庭で文鳥の看護を行うことになります。下記で解説する看護のポイントに注意することで、文鳥の負担を減らすことができるでしょう。
ただし、あくまで一般的な方法に過ぎません。病院に連絡することができ、文鳥の症状に合わせた個別の指示を受けることができる場合は、それに従うようにしてください。
保温する
鳥の看護において、ほぼ全ての文献で最初に挙げられている最も重要なポイントが保温です。
病気で弱った文鳥は上手く体温を維持することができず、健康な時なら何ともない気温でも膨羽状態になっていることがあります。体温の維持はエネルギーを必要とする行為ですから、文鳥にとって負担となります。
維持すべき温度については、文鳥の膨羽がおさまる程度です。体調や日の当たり方、時間帯によっても変化しますから、文鳥の様子を観察し、何度にすれば膨羽の必要が無くなるのかを見極めます。
とはいえ一応の目安はあります。文献によって多少の差があるものの、28度から30度程度を目安にすると良いでしょう。32度を超えると暑がる様子を見せる文鳥が多いようです。
いずれにせよ繊細な温度調節を行うことになるため、必ず温度計を使用して管理します。
保温の方法は、普段使用しているペットヒーターを使えば問題ありません。ケージ内に温度の勾配をつけ、文鳥が移動することで最も快適な温度の場所を見つけられるようにすることが大切です。
ケージの半分をおやすみカバーで覆うと、ケージ内に温度勾配をつけやすく、文鳥もリラックスしやすくなります。ヒーターとカバーを併用することになりますから、下記のような難燃性の素材でできたカバーを使い、火事には十分に注意しましょう。
もしペットヒーターが不調であれば、エアコンを使って部屋ごと目標温度にあわせます。石油ストーブなどのガスが出る暖房器具の使用は厳禁です。
なお、保温処置をやめる際に急激に温度を下げると、それがきっかけで病気が重篤化したり、治りかけていた病気をぶり返したりすることがあります。保温処置をやめるということは病院を受診できたということですから、基本的には獣医の指示に従えば良いのですが、特に指示がない場合でも少しずつ段階的に温度を下げるように注意しましょう。
保湿する
保温に続いて保湿も重要なポイントです。呼吸器系の疾病の場合には、特に加湿を行うことが負担の軽減につながります。
参考:文鳥と鼻炎
目安となる湿度は55%から60%です。湿度計を利用して、適切な湿度を保つようにします。
加湿器を使用したり、濡れたタオルをケージの近くに設置することで加湿することができます。
安静にする
病気の時は安静にして、リラックスした状態で過ごす必要があるのは人間も文鳥も同じです。
病鳥の居る部屋では騒音や振動を起こして文鳥を驚かせないように注意しましょう。また、文鳥の視野はとても広く、落ち着き無く動くものがある環境ではなかなかリラックスできません。
参考:文鳥のケージ設置場所
上記のような環境を避けるためとはいえ、むやみにケージの設置場所を変えるとかえってストレスをかけることになる場合があります。家族の協力を得て静かに過ごすと共に、「保温する」の項目で解説したようにケージの半分を目隠しで覆うなどしてあげると良いでしょう。カーテンを閉めて窓の外からの視覚的な刺激を遮ってあげることも、弱っている文鳥にとって安心に繋がります。
また、病鳥が心配だからといって飼い主が頻繁に覗いたりしていては、まったく休養することができません。病鳥は飼い主が来るとできるだけ元気な姿を見せようとしますから、余計な負担をかけることになります。
心配でも、病鳥と接触するのは必要なお世話をする場合だけに留め、そうでない場合は遠くから眺めるようにしましょう。
エサを食べているか確認する
エサを食べていない、食べることができない状態はかなり深刻です。文鳥のような体の小さな鳥では特に、短時間の絶食でも容易に死に至ります。絶食までは至っていない場合でも、食餌量が減少した状態では十分に病気と闘うことができません。
したがって、エサをしっかり食べているかどうかを確認することは重要です。
普段のエサでは食欲がわかない場合でも、お気に入りのシードや粟穂なら食べることがあります。このほか、病気の時の栄養食としてぬるま湯でのばしたハチミツを飲ませることが昔から推奨されています。
絶食状態になっており、すぐに病院を受診することもできない場合には、強制給餌を試みざるを得ないこともあるでしょう。ヒナのときと同様に数時間おきに挿し餌を与えることになります。ただし、重度の消化器系疾患(腸閉塞)などを起こしている場合は、いくら食べ物をもらっても消化・吸収することができず、挿し餌がずっとそ嚢に残ってしまうことがあります。
不衛生なものを取り除く
感染性の疾患の場合、不衛生な飼育環境が原因で病原体が増殖していることがあります。感染性の疾患ではない場合でも、弱った文鳥は病原体への感受性が高まっていますから、健康なときなら問題なかった環境でも感染の危険性があります。
したがって、止まり木や敷紙、おもちゃ、餌入れや給水器など、飼育設備は普段以上に衛生的に保つ必要があります。
不衛生なものは予備と交換するか、取り除いてしまい、入念に洗浄・消毒しましょう。
止まり木の位置を下げるか取り除く
足に症状が現れている場合や、深刻な全身状態の低下を起こしていると、しっかりと止まり木に捕まることができなくなることがあります。
こうした場合は床に座り込んでいるか、止まり木に捕まっていても落下の可能性が高くなっています。
したがって、止まり木の位置を低い位置に変えるか取り除いてしまい、ケガを予防しましょう。既に床に座り込んでいる場合には、ヒナを育てるときに使うようなプラスチックケースに移して看護しても良いでしょう。
止まり木の位置を低くしたり取り除いたりすることによって、普段のエサ入れや給水器では不便になる場合があります。
背が低く、文鳥が乗ってもひっくり返らない重さの皿に、エサや水を入れて床に置くと良いでしょう。床にエサを撒いたり、粟穂を置いておくという方法もあります。
病鳥を隔離する
もし文鳥を複数羽飼育していたり、他の動物を飼育していたりする場合は、病鳥と他の動物とを接触させないようにする必要があります。
飼い主には病気の子だけでなく、飼育している全ての子を守る義務があります。直接接触を避けることはもちろん、エサや飲み水の共有を止め、病鳥が使用したおもちゃ等に触れさせないようにしましょう。
明るくすべきか暗くすべきか
病鳥の看護に際して、明るさをどうすべきかは日本と海外で意見が分かれているようです。
日本の文献では、「夜でも食べたい時にエサを食べられるように、ライティングを行ってエサが見えるようにすべきである。鳥は明るい場所でも熟睡できるため、寝不足にはならない。」として、文鳥のケージやプラスチックケースを24時間明るく保つことが推奨されています。
これに対して、海外の文献では明るい環境では鳥がリラックスできない点を強調します。「昼行性の鳥にとって薄暗い環境はリラックスでき、休養や睡眠を促すことになる。病鳥の居る部屋では常夜灯を使うなど、十分な睡眠を取ることのできる暗さを維持すべきである。」として、十分な暗さを確保することを推奨しています。なお、文鳥は昼行性の鳥です。
さて、日本と海外とで真逆の処置を推奨していますから、飼い主はどうするのかを自分で判断する必要があります。
ただ、もし日本で24時間のライティングが推奨されている理由が「夜でも食べたい時にエサを食べられるように、ライティングを行ってエサが見えるようにすべきである。」ということだけであるのであれば、ライティングを推奨する根拠としては弱いと言わざるを得ません。
文鳥をはじめ、鳥類の視力は人間よりも遥かに発達しています。確かに、全く光の届かない真の暗闇の中ではエサが見えないでしょうが、人間が薄暗いと感じる程度の明るさがあるのであれば、鳥がエサを見失うということは考えづらいでしょう。現に、まいにち文鳥と接している飼い主であれば、おやすみカバーを掛けた後の文鳥がこっそり「夜食」を食べている場合があることに気がついているはずです。
参考:文鳥の目
したがって、論理的に考えて「夜でも食べたい時にエサを食べられるように」という目的は、「真っ暗にしてはいけない」という理由にはなっても「ライティングを行って明るくすべきである」という理由にはなりません。
ライティング、すなわち、昼の長さを長くすることは、養鶏場などでニワトリの食餌摂取量を増やし、成長を促進するために行われています。昼の長さを長くするとニワトリは睡眠時間を削ってエサを食べるようになるため、体重を増加させることができるのです。とはいえ、これは健康なニワトリに対して「大きな卵を産める体にするため」や「肉がいっぱいとれるようにするため」といった産業的な目的があって行われる処置です。
病気の文鳥の寝る時間を削ってエサをたくさん食べさせることが看護として適切であるという主張は、明確な根拠の説明なくして受け入れられるほど常識的なものではありません。
上記の考察から、昼は通常通りか少し暗い程度の明るさにして、夜には常夜灯をつけて「エサが見える程度の暗さ」を維持するのが、現状では無難な折衷案であると言えるでしょう。
参考文献
書籍
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