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文鳥と羽咬症

背中の羽が美しいぽん先生
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トップ画像:健康な羽を見せて羽咬を戒めるぽん先生(@comatsu_cotoLi

羽咬症は様々な要因で発生するため、原因の特定には飼い主の積極的な情報提供が重要になります。

何でもかんでも「ストレス」で片付けてしまうのではなく、基礎的疾病の可能性も踏まえて日頃の健康観察を行いましょう。

羽咬症(うこうしょう)とは、自分の羽をかじって傷つけてしまう問題行動です。

クチバシの届く範囲を咬むので、頭部以外の羽毛が損傷します。

羽自体を引き抜いてしまうのが毛引き症と呼ばれるのに対して、羽咬症は羽軸(うじく)を残し、羽枝(うし)をむしり取る症状を指し、区別されています。

文鳥では毛引き症はあまり見られないものの、羽咬症はよく観察されます

長い正羽を咬むか短い正羽を咬むかで、さらに2種類に区分されます。

長羽損傷型

文鳥でよく見られる羽咬症はこちらのタイプです。

長い正羽を咬んで損傷し、羽が曲がり、あるいは折れてちぎれます。

両側の正羽を損傷した場合は飛ぶことができなくなり、片側だけの場合はキリモミ飛行をするため危険です。

短羽損傷型

セキセイインコによく見られるのがこちらです。

短い正羽を咬んで小羽枝(しょううし)が損傷します。

色素色や構造色が失われるため黒く見えます。

治療のためには飼い主の報告が重要

羽咬症は非常に多様な原因が考えられるため、治療を成功させるためには総合的で多面的なアプローチが必要です。

また、ストレスが主要な原因であるとする文献もあれば、様々な基礎的疾病に起因するものであるとし、ストレスを主因とすることに懐疑的な文献もあるなど、専門家の間でも意見が一致していません。

こうした事情から、羽咬症の原因の特定には、飼い主から主治医への積極的な情報提供が他の病気に増して特に重要であるといえます。

特に、羽を咬んでいるタイミングに何らかの規則性が無いかよく観察しましょう。

餌を食べた直後なのか、特定の餌の時だけではないか、別の人間や鳥と一緒に居る時に咬んでいないか、時間帯はどうか、その日の天気はどうかなど、毎日一緒にいる飼い主でなければ気づくことのできない重要な情報があります。

前述の規則性に加え、飼育環境や既往歴、最近の様子の細かい描写、親鳥の病歴など、飼い主だからこそ知り尽くしている情報を、主治医と一緒に丁寧に検証していく必要があります。

羽咬症の原因と予防

上述のとおり、羽咬症の原因は非常に多岐にわたります。

基本的には、何らかの疾病の症状として羽毛や皮膚にかゆみや痛み、違和感が生じ、それが引き金となって羽咬症を発症します。

心因性の場合には、ストレスによる脅迫観念や退屈しのぎなどによって羽を咬んでおり、別のアプローチが必要になるでしょう。

以下、代表的な原因を詳しく見ていきましょう。

栄養不良

栄養不足や栄養バランスの偏りは様々な病気の原因になります。栄養不良が直接・間接の原因となって羽咬症が引き起こされることがあります。

文鳥は本来雑食性で、昆虫や軟体動物も食べることができます。

推奨される栄養バランスについて、文鳥を含むスズメ目については、

  • 粗タンパク質:12%
  • 粗脂肪:4%
  • エネルギー320kcal/100g

の飼料が理想的であるとされています。

ヒナや幼鳥、換羽中の場合は、粗タンパク質が20%必要になります。

文鳥のような小型のスズメ目の鳥は特に基礎代謝が高いため、オウム・インコ用の餌に比べるとカロリーが高くなっています。

主食としてシードを与えている場合、嗜好性が高いため食いつきがいいものの、栄養バランスを適切に管理するために注意が必要となります。

そもそも普通の種子類はほとんどが炭水化物であり、粗タンパク質が10%程度しかありません。

一方、粗タンパク質を20%~30%含有し、必須アミノ酸も均衡に含まれている脂肪種子(カナリーシード等)ですが、その名の通り脂肪分が多く、さらに過食する傾向があります。

したがって、混合バランスが適性になっている、栄養素のバランスを確かめることのできる混合シードを用いると共に、文鳥がカナリーシードばかり食べて他のシードを残すことの無いように、毎日食べきれる量を与えることが重要です。

また、シードだけではビタミンやミネラル、ヨウ素などの栄養素を補うことができません。青菜やビタミン剤等を適切な分量で与える必要があります。

この点、ペレットを主食にすると一口で必要な栄養素をバランスよく摂取することができ、栄養管理の面では簡単になります。

ただ、ペレットは嗜好性が低いため、シードからの切り替えに苦労する場合があります。

文鳥それぞれに好みがあり、ペレットでも比較的食べてくれる子もいれば、特定のメーカーのペレットしか食べない子、ペレットは絶対に拒否する子など、様々です。

また、後述するアレルギーの可能性があるため、主食にしているペレットに着色料や防腐剤、化学調味料等が用いられている場合、一度オーガニックのものを試してみると、症状の改善に有効な場合があります。

ヨウ素欠乏症

栄養不良の一種ですが、毛引き症や羽咬症についての複数の文献で、ヨウ素の欠乏が個別に言及されています。

ヨウ素は甲状腺ホルモンを合成するために必要な物質です。ヨウ素が欠乏すると、低下した甲状腺ホルモンの分泌を回復させるべく甲状腺刺激ホルモンの分泌が促進され、甲状腺を発達させようとします。

この状態が慢性的に続くと甲状腺が肥大し、甲状腺腫を発症します。

甲状腺腫はセキセイインコの死因の第2位となっています。文鳥では報告が少ないですが、実態としては非常によく観察されており、その発生頻度はセキセイインコを上回る可能性さえあるとする文献もあります。

甲状腺ホルモンは代謝にも関与しており、羽毛の発達に重要な役割を果たしているため、甲状腺の機能低下によって羽毛に異常が生じ、羽咬に至る場合があります。

ヨウ素は穀類から補給することができません。シード食の文鳥の場合、副食やサプリメントを与えることを怠らないように注意しましょう。

アレルギー

シードに残留した農薬や殺虫剤、除草剤などの化学薬品、あるいはペレットに使用されている着色料や防腐剤、化学調味料などが、アレルギー様の反応を引き起こす場合があります。

アレルギーが原因の羽咬症が疑われる場合、餌をオーガニックのものに変更して様子を見ることになるでしょう。

重金属中毒

重金属中毒、特に亜鉛の中毒によって毛引きや羽咬症が引き起こされる可能性が指摘されています。

亜鉛はメッキ加工に用いられ、おもちゃやケージの他、人間が使うカップやドアノブ、家電製品等に使用されている場合があります。

また、医薬品にも亜鉛は利用されており、UVローションやベビーパウダーに含まれていることがあります。

不適切な飼育環境

不適切な飼育環境も様々な病気の原因となり得ます。

衛生状態が良好に保たれているか、生活サイクルが不規則になっていないか、日光浴の時間はとれているか、空気は適度に換気されているかなど、改めて点検しましょう。

特に、飼育環境の湿度が低すぎると皮膚が乾燥し、かゆみから咬んでしまう場合があります。

乾燥地帯に生息しているセキセイインコやオカメインコは乾燥に強いですが、文鳥は熱帯であるインドネシア原産の鳥です。

1980年以降の文鳥の主要な分布地の1つであるバリ島南部の気候について、デンパサールを例にとれば、年間を通じて湿度は80%程度を維持しています。

Average relative humidity in  Denpasar, Indonesia

一方、人間が快適に過ごしている屋内の湿度は20%程度である場合が多いでしょう。

もちろん、家の中の湿度をずっと80%に保つ必要はありません。それはそれでカビの繁殖などの問題を起こす可能性さえあるでしょう。

しかし、あまりに乾燥した環境が継続すると問題を起こす可能性がある点には留意する必要があります。

そのほか、ケージの設置場所についての詳細な検討は下記の講義も参考にしてください。

ホルモン失調

過発情や不規則な生活リズムなどの要因でホルモン失調が生じると、性欲や攻撃性の増大など精神面に強い影響があり、羽咬症に至る場合があります。

文鳥との接し方、暮らし方に問題が無いか、改めて見直してみましょう。

外部寄生虫・皮膚炎・外傷

外部寄生虫や感染症による皮膚炎、外傷は、かゆみや痛み、違和感を伴うため、羽咬症の発症に至る場合があります。

体腔内の炎症

気嚢炎など体腔内に炎症を患うと、痛みや違和感から、該当部位の近くの羽を抜いたり咬んだりしてしまう場合があります。

精神的ストレス

過剰な精神的ストレスから毛引きや羽咬に至る場合があります。

引っ越し等による環境変化、同居の犬猫などに対する恐怖など、精神的ストレスの原因は無数に考えられます。

時間や慣れが解決してくれる性質のストレスの場合は静観も1つの選択肢ですが、そうでないものはストレス因を取り除く、または緩和する対策を講じる必要があります。

退屈

野生の鳥は、起きている時間の70%程度を餌探しに費やしていると言われています。

飼い鳥たちは餌を探す必要が無いため基本的にヒマであり、退屈をごまかすために毛引きや羽咬に至る場合があります。

飼い主が適度に遊ぶことや、新しいおもちゃを与えることが分かりやすい対策です。

その他、あえて餌探しをさせるという手法もあるようです。

例えば餌入れの上に薄く切った人参や小松菜をかぶせることでシードやペレットが直接見えない状態を作り、餌探しに挑戦してもらうことも、良い刺激になるでしょう。

羽咬症と付き合う

羽咬症は見た目に痛々しく、飼い主としては心が痛むものですが、羽咬症それ自体は死に至るような性質の病気ではありません。

もちろん、飛行が不安定になる危険がありますし、皮膚を咬んで出血してしまう自咬に発展する可能性もゼロではありません。

とはいえ、羽咬症を発症してしまい、万策尽くしても改善が見られないという事態は起こりえます。

その時には「羽咬症と付き合う」という覚悟が必要になるでしょう。

大型のインコ・オウム類には、毛引き症を発症しても元気に数十年生きている子がたくさんいます。

例え羽咬症が治らなかったとしても、飼い主であるあなたがそれを認め、愛を持って接すれば、その文鳥の一生は決して不幸なものではないはずです。

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