文鳥と熱射病
トップ画像:羽うちわ(自前)で涼むキャンディ先生(@macandy_buncho)
室内飼育が一般的な文鳥は、一年を通じて熱射病のリスクがあります。
熱射病を起こしにくい環境を理解するとともに、お出かけや引っ越しなど、ほんの少しでも環境が変わる際には入念にチェックすることが重要です。
また、熱射病を起こしてしまった際の応急処置についても記載してありますので、ご確認ください。
熱射病の原因
体の熱を十分に逃がすことができず、体に熱がこもることによって熱射病を生じます。
鳥は40度程度の高体温を維持しています。この高体温のおかげで、静止状態から飛び立つような急激な運動が可能なのです。
汗腺が無いため汗をかくことはありませんが、もともと熱射病ギリギリの体温を維持しているため、鳥は優れた体温低下機構を持っています。クチバシを開けて気道から水分を蒸散させることによる放熱や、羽毛に覆われていない足への血流を増加させることによる対向流熱交換などが、代表的な体温低下機構です。
しかし、著しく高い外気温や急激な温度変化、水分不足による蒸散の妨げ、緊張や疾患などによる体温調節機構の障害によって熱射病が生じます。
特に、保温が必要で、かつ体温調節機能の弱いヒナや病鳥で熱射病が多発します。
熱射病の症状
上昇した体温を下げるために、開口呼吸や促迫呼吸(浅く早い呼吸)、縮羽、開脚、伸首姿勢などの高体温兆候を見せます。
開口呼吸による水分蒸発が著しくなり、脱水状態が見られることもあるでしょう。
さらに体温が上がると、脱水から虚脱、脳障害から痙攣を生じて、死に至ります。
体温を下げることに成功したとしても、高体温障害が強いと今度は逆に膨羽し、全身状態が改善せずに死亡することもあります。
熱射病の対処
飼い鳥一般向けに書かれたものにはなりますが、熱射病への応急処置が記載された文献がありましたのでご紹介します。
- 鳥を静かで涼しい場所に移す
- 肌が濡れる程度まで水を噴霧する
- 鳥の足を水で濡らした状態に保つ
- 鳥に追加のストレスを与えないよう注意する
- 鳥の様子を観察しつつ、病院に連絡をとる
熱射病の予防
海外では、熱射病はケージによる屋内飼育の鳥で特に注意が必要であるとされています。鳥小屋で飼育されている場合、気温が多少高くなっても、自然の日陰と換気、蒸散による体温調節で対応できるのです。
日本の文鳥は密閉性の高い家屋で室内飼育されていることがほとんどです。まずは「油断すると熱射病を起こす人工的な環境で飼育しているんだ」という自覚を持ちましょう。
そのうえで、具体的な予防策について考えます。
まず、直射日光が当たる場所にケージを置かないようにしましょう。特に窓の近くは気温の変化も激しく、少し距離を離すことが大切です。また、部屋の換気も必要です。換気されている環境では蒸散による体温低下を効果的に行うことができます。
参考:文鳥のケージ設置場所
また、水を切らさないことも重要です。飲み水を切らさないことはもちろん、ケージに外付け式の水浴び器を設置しておけば、飼い主の外出中でも文鳥自身の判断で効率的に体温を下げることができます。
熱射病というと夏をイメージしがちですが、ヒーター類による保温が一般的な秋・冬も文鳥にとっては熱射病のリスクの高い季節になります。
ヒーター類を使用する際は、必ずサーモスタットを併用し、安全を確保してください。文鳥にとってのヒーターは、操作不能の巨大ストーブのようなものです。安全装置なしで使うことの危険性は言うまでもありません。
季節を問わず、エアコン等によって部屋自体の気温をコントロールすることがあると思います。人間が快適に過ごすことのできる温度は、概ね文鳥にとっても快適であるため、熱射病のリスクを下げることに繋がります。
ただし、夏場の留守にはエアコンを切り、帰宅後に冷房を効かせるような使い方は、急激な温度変化のために文鳥が体調を崩しやすくなります。夏場でも温度が上がりすぎない部屋にケージを移すか、留守中も弱く冷房を使用することを検討しましょう。もちろん、エアコンの風が直接当たらない場所にケージを設置することを忘れてはいけません。
また、キャリーでのお出かけにも注意が必要です。バッグ内部のような狭い空間は、小さな保温器具でも簡単に高温になってしまいます。必ず温度計を使用し、常に内部の温度が具体的な数字で見えるようにしましょう。なお、お出かけ時の保温に使い捨てカイロを使うと、酸素を奪ってしまうため中の鳥が窒息します。カイロを使いたいのであれば電子式のものを使いましょう。
熱射病を起こす気温は、それぞれの子によって異なります。普段からケージに温度計を設置して、「どのくらいになると暑そうな様子を見せる」という目安を把握しておくことも、熱射病の予防には欠かせないポイントになります。
参考文献
書籍
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