文鳥と腸閉塞(イレウス)
トップ画像:バイクで颯爽と出勤するパチクリ先生(@popporoporosuke)
腸の運動を司る神経に異常が生じたり、異物が侵入したりすること等によって、腸が塞がってしまうことを腸閉塞、あるいはイレウスと言います。
便が出せなくなったり、腸の吸収機能が障害されたりすることによって、様々な悪影響が生じ、急激に状態が悪化し、一日ともたずに死亡してしまうこともある疾病です。
腸閉塞の原因となる病気の予防法を確認するとともに、放鳥時には異物を食べてしまわないように目を離さないことが、愛鳥の命を守るために重要です。
腸の閉塞には様々な原因が考えられます。
麻痺や痙攣が生じて腸の動きが機能的に止まってしまうことがあります。腸を支配する神経を強く障害する鉛中毒症が典型的な原因となります。幼鳥では気温の低下によって腸の蠕動運動が低下することが知られており、注意を要します。
異物の誤食や大量の不消化物、腫瘍や腸炎による腸管の狭窄などにより、物理的に腸が閉塞することもあります。
参考:文鳥と腸炎
また、腸自体に疾病がなくても、卵塞や生殖器の腫瘍によって、外部から圧迫されることにより、腸閉塞を起こすことがあります。
参考:文鳥と卵塞(卵詰まり)
このほか、腹膜炎による腸の癒着によって閉塞してしまうこともああります。腹膜炎は乾性症や癌に加え、卵材が卵管から漏れ出てしまった場合にも発生します。
腸管の閉塞だけでなく、血行障害も伴う場合があります。嵌頓(かんとん)ヘルニアがその原因になります。腹部ヘルニアを起こした際に腸が皮下に脱出してしまい、その状態でヘルニア輪が縮むことで腸が締め付けられます。このほか、腸捻転や腹膜炎の炎症産物が紐状になって腸に絡まることによっても、血行障害を伴う腸閉塞が発生します。
腸閉塞の症状
腸閉塞を生じると腸の内容物やガスが流れず、腸内に滞留します。
多くの場合排便が停止し、排便しても少量であったり、下痢を起こしていたり、血液を含んでいたりします。
鳥類は絶食時でも胆汁の排泄があり、いわゆる便秘というのは滅多に観察されません。便が出ていないということは異常を発見するきっかけになります。
腸がつかえているために、そ嚢にエサや水が滞留したままとなっている場合もあります。
腸管は滞留した腸内容物やガスによって膨張します。強く圧迫されるようになると血行障害を生じ、腸管が浮腫を起こします。こうなると水分やガスを吸収することができなくなるため、悪循環が生じます。
腸は内容物を押し出そうとして無理に蠕動運動をするため、激痛を生じます。痛みから膨羽や嗜眠を起こし、腹部を気にしている様子が見られるでしょう。
嘔吐が伴うことも多く、水分を損失します。水を飲んでも吸収できないため脱水を起こし、重大な循環障害を生じます。
さらに、滞留した腸内容物で腸内細菌が異常増殖して毒素を生産し、血流に乗って全身にばら撒かれてしまうことがあります。
腸閉塞は様々な問題を起こすため、急激に状態が悪化します。文鳥のような小型鳥では一日ともたないことが多いようです。
腸閉塞の予防
腸閉塞の原因となる腸炎や卵塞の予防については、それぞれ個別の講義で詳しく検討していますので、そちらをご覧ください。
参考:文鳥と腸炎・文鳥と卵塞(卵詰まり)
異物の誤食については、放鳥時に目を離さないことが重要です。特に、発情抑制のために食餌制限を行っている場合や、発情中には誤食を起こしやすくなるため注意が必要です。
画像:飼い主が異物を食べないように注意するパチクリ先生(@popporoporosuke)
参考文献
書籍
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