文鳥のヒナと学習期にやること
トップ画像:学習期の幼いぽん先生(@comatsu_cotoLi)
おおむね4週齢から11週齢の文鳥のヒナ(幼鳥)は学習期であると言われます。
この時期に経験したことは決して忘れないため、いかに良い習慣を身に着け、悪いクセを付けさせないかが重要です。
今回は、学習期のヒナが経験すべきことについて学びます。
ひとり餌に慣れる
ひとり餌の練習は3週齢(生後22日~28日)頃の、ヒナが歩ける(ウォーキング、ホッピングができる)ようになった段階で始めますが、学習期も継続します。
アワ穂を使ってひとり餌の訓練を始めるのが一般的です。ヒナの家(プラスチックケースやハムスター用の小さなケージが使われることが多い)の床にアワ穂を置いておき、ヒナがいつでもアワ穂を食べられるようにしておきます。
最初は様子を見ているだけかもしれませんが、すぐにつついたり上に乗ったりして遊び始めるでしょう。そのうちアワ穂からアワをちぎることを覚え、殻の剥き方や食べ方を覚えます。
ヒナを飼育する高温多湿の環境ではアワ穂はすぐにダメになります。ヒナが遊んでいるうちにアワ穂がフンまみれになることもよくありますから、1日1回から2回は必ず新しいものに交換し、衛生的で新鮮なものを与え続けるようにしましょう。
また、アワ穂を入れ始めても挿し餌は必ず継続します。実際にはヒナごとに様々ではあるものの、一般的には6週齢(生後43日~49日)頃を目安に完全にひとり餌へ移行するとされています。アワ穂を入れ始めるのは3週齢頃ですから、まだまだ挿し餌が必要です。
もしアワ穂への反応がイマイチであれば、色を変えてみると良いかもしれません。市販のアワ穂には白っぽいものと赤っぽいものの2種類があり、どちらも栄養的には大差ありません。しかし、ヒナの好みは様々で「白が大好き」という子もいれば「絶対に赤しか食べない」という子もいたり、「色は気にしない」という子もいます。
ヒナが成長してくると大人用のケージで過ごす時間が増えていきます。大人用ケージについては後述しますが、ヒナの足元が覚束ないうちはアワ穂と一緒に大人用の混合シードをケージの床に置いたり撒いたりしておきます。混合シードは陶器製の小皿に入れておいても良いでしょう。ヒナが止まり木にしっかり掴まれるようになったら、アワ穂を金網に付けたり、金網やケージの小窓に設置するタイプのエサ入れに混合シードを入れたりして、大人の生活に移行していきます。
なお、挿し餌から完全なひとり餌への移行は、ヒナの週齢と学習状況を確認しながら慎重に進めるものです。身体の成長にあわせて挿し餌の回数を段階的に減らしていき、ひとり餌の学習を並行して進めます。ヒナが確実に自分で餌を食べられるようになったことを確認して、やっと挿し餌を完全に卒業するのです。挿し餌からひとり餌への移行について、詳細は別の講義で解説する予定です。
また、混合シードに配合されている穀物の詳しい分析は下記の講義で行っていますので、あわせてご覧ください。
青菜に慣れる
学習期には、ひとり餌と並行して青菜にも慣れてもらうようにしましょう。
小松菜や豆苗、チンゲン菜など、青菜をアワ穂と同じようにヒナの家に置いたり、放鳥時に与えてみると良いでしょう。大人用のケージで過ごすようになったら、菜差しに挿しておきます。
青菜もアワ穂と同様、ヒナの暮らす環境ではすぐにダメになりますし、床に置いておけばフンまみれになります。マメに交換することを忘れないで下さい。
挿し餌にすりつぶした青菜を混ぜている場合、見た目にさえ慣れれば比較的スムーズに青菜を食べられるようになることが多いようです。しかし、これもヒナによって様々ですから、長い目で取り組みましょう。無理強いするようなことをして、ヒナを怖がらせてはいけません。
なお、文鳥が食べられる野菜、食べられない野菜についての詳細は下記の講義で解説していますので、あわせてご覧ください。
ペレットに慣れる
ペレットの練習もアワ穂や青菜と同様に学習期に始めると良いでしょう。「そもそもペレットとは何か」「シードと何が違うのか」等については、下記の講義をご覧ください。
日本は自然志向が強く、ペレット食に抵抗のある飼い主も多いと言われています。確かに、自然の穀物そのままのシードと違い、ペレットは人工的に製造されているものです。文鳥自身も、シードとペレットではシードの方を好きな子が大多数です。
しかしながら、全ては愛鳥の健康あってこそです。ビタミンやヨウ素などの栄養失調とそれに起因する疾病は、ペレット食の普及とともに上手く予防されるようになってきました。
また、ペレットは慢性病を患った病鳥の療養食として病院で処方されることもあり、ペレット食に慣れていない場合は治療手段が制限されることになります。
少なくとも飼育経験の浅い飼い主は、ペレットも食べられるようにヒナのうちから訓練をしておくのが無難です。
具体的には、小皿に入れて床に置いたり、エサ入れに入れてヒナが食べるのを待ちます。放鳥時に飼い主がペレットを指でつついていると、興味を持って寄ってくることが多いでしょう。
文鳥によって好みが違うため、どうしても食べてくれない場合は違うペレットを試してみると良いでしょう。下記の4種類は、いずれも文鳥に与えるペレットとして実績があります。
なお、ヒナがペレットを食べられるようになったからと言って、急激にシードを与えるのを止めてはいけません。ヒナは身体が完全に育っておらず、急激な食餌内容の変更によるストレスで体調を崩す場合があります。ペレットに慣れる練習をすることと、ペレットを主食にすることとは全く別のテーマです。
大人用ケージに慣れる
ヒナが止まり木にとまれるようになったら、日中は保温した大人用のケージで過ごします。
4週齢(生後29日~35日)にはこの段階に至るヒナが多いでしょう。夜にはヒナの家(プラスチックケースなど)に帰して寝かせます。
様子を見つつ、5週齢(生後36日~42日)頃には夜も大人用のケージで眠るようにしてヒナの家は完全に卒業します。
ケージの設置場所については、下記の講義を参考にしてください。大人用のケージで過ごすようになったら日光浴の時間も必要ですから、昼はしっかり明るくなる場所にケージを設置しましょう。
参考:文鳥のケージ設置場所
ヒナはまだ上手く飛ぶことができず、止まり木から落下する可能性があります。ケガ予防のためにケージのフン切り網は外し、底には新聞紙などを敷いておくと良いでしょう。
ケージの温度は、大人の文鳥よりも少し高めに保ちます。25度を下回らない程度を目安とし、最終的にはヒナが暑がったり寒がったりしていないかを基準に温度を判断します。
なお、湿度に注意を払うことも忘れないようにしましょう。特に冬の乾燥はヒナには苦しいですから、加湿が必要です。
参考:文鳥と湿度管理
飼育グッズに慣れる
様々な飼育グッズに慣れておくのも学習期の重要な課題です。
エサ入れや水浴び器、ペットヒーター、飲み水入れ、菜差しなど、ケージ周りの基本的な設備に慣れてもらいましょう。
放鳥時にTパーチに慣れてもらうようにすると、大人になってからも体重測定が楽になります。
また、愛鳥に使って欲しいオモチャがあるのであれば、ぜひ学習期に経験してもらうべきです。ブランコ、鏡、鈴などが文鳥のオモチャとして一般的です。特にブランコは大人になった文鳥のお気に入りの場所になり、寝床を兼ねることも多いです。2つ以上お気に入りのブランコがあると、文鳥から寝床を取り上げることなく交互に洗うことができ、衛生管理の観点から便利です。
ただし、無理強いは厳禁です。飼い主が遊んでいる様子を見せたり、触れても大丈夫な様子を見せたりして、あくまでもヒナ自身から寄ってくるのを待ちましょう。一度怖い思いをすると、もう二度と近づかなくなる可能性もあります。
水浴びに慣れる
水浴びは身体を清潔に保つほか、ストレス解消や運動のために重要な習慣です。学習期に経験できなかったり、怖い思いをしたりすると水浴びしない子になってしまうこともありますから、きちんと練習しておきましょう。
水浴びの練習は4週齢(生後29日~35日)頃から初めて構いませんが、必ず飼い主が見守っている時だけにします。
水浴び器に浅く水を張ってケージに設置したり、放鳥時に飼い主が触って見せたりします。光を反射して揺れる水面に興味を持ち、近づいて来るでしょう。近づいては離れ、つついては離れという動作を繰り返しているうちに、やがて思い切って飛び込む時が来ます。
ヒナの羽毛は大人の羽毛よりも水分を含みやすく、羽根をはばたかせて身体を乾かす方法をヒナ自身が知らないため、水に濡れた後の乾燥には特に注意が必要です。完全に乾くまで見守り、特にケージの外で水浴びした場合は室温を高く保つようにしましょう。
水浴びの基本事項や、ヒナの水浴びに関する注意事項は下記の講義も参考にしてください。
放鳥に慣れる
足がしっかりしてきて止まり木にとまれるようになる4週齢(生後29日~35日)頃から放鳥を始めます。
ヒナはいろいろな物に興味津々ですが、まだ飛べないので落下する危険があります。十分に広い平面に降ろしてあげて、放鳥中は決して目を離さないようにします。体力もないので、放鳥も10分未満のごく短時間から始め、少しずつ長くしていきましょう。
放鳥時にはホッピングしながら身近な物をつついたり、飼い主の指をかんだりして遊びます。この時に大人用のエサや青菜、ペレットを撒いておくと、食べることもあるでしょう。
そうして放鳥していると、ある日ヒナが飛べるようになります。最初の飛行は飼い主にとっても感動の瞬間です。ヒナと共に大いに喜びましょう。
ただし、飛べるようになったヒナの放鳥にはより一層の注意が必要になります。まだ上手くコントロールできないにも関わらず好奇心に任せて飛んで周りますから、危険なものを予め取り除いておきましょう。
部屋の中にある鏡には覆いをかけ、窓は全て閉まっていることを確認した上でカーテンを引きます。人間の食べ物や観葉植物なども片付けておきましょう。人間の食べ物を狙う癖が付くと中毒物質を食べてしまうリスクが高まります。また、熱いお茶やコーヒーに飛び込んでヤケドする危険もあります。
危険物にも注意しましょう。刃物は片付け、扇風機は電源を切るかカバーを付けます。亜鉛メッキの製品など、重金属中毒の原因になるものもしまっておきます。
部屋のドアは閉めておきます。人間が突然ドアを開けると事故の原因になりますから、家族全員に放鳥中であることを伝えたり、ドアに放鳥中のボードをぶら下げたりして注意喚起します。必ずノックし、放鳥を見守っている人の許可があってから部屋に入るルールを徹底すると良いでしょう。
移動用キャリーに慣れる
病院の受診や引っ越しなど、文鳥が外出する場面は常に大きなストレスがかかります。少しでも負担を減らすために、せめて移動用キャリーには予め慣れてもらっておくべきです。
大人用のケージで過ごすようになった辺りから、少しずつ移動用キャリーにも挑戦し始めるのが良いでしょう。キャリーの中にアワ穂を置いて自由に出入りできるようにしておき、慣れてきたら出口を閉じてしばらくキャリーの中で過ごしてもらいます。
ヒナが入ったキャリーを持って部屋の中を歩くと、さらに実践的な練習になります。
なお、文鳥の移動用キャリーには下記のような小型のもので十分です。下記のものには専用の止まり木やエサ入れも付属しており、初心者でも扱いやすくなっています。
保定に慣れる
鳥が人に掴まれることに慣れているか否か、つまり保定に慣れているか否かは、特に病院での診察の場面で非常に重要な意味を持ちます。
獣医師向けの専門書では必ずといってよいほど、病鳥を保定すると急激に状態が悪化する危険があることが指摘されています。保定に十分慣れておらず、緊張している様子が見られる場合には、リスクを取って保定するか、眺めることによる診察しかできません。文鳥は緊張によって発作を起こしやすい可能性も指摘されていますから、なおのこと保定に慣れてもらう必要があります。
参考:文鳥と過緊張性発作
保定にあわせて、爪切りにも慣れてもらうと良いでしょう。爪を切る必要がない場合には、爪切りを爪に当てて、切るフリをするだけで構いません。
短時間の保定や爪切りのフリから始め、終わったらご褒美に好物のシードをあげると、嫌な思い出になりにくいでしょう。
なお、保定の仕方や爪切りについては下記の講義をご覧ください。
参考:文鳥の爪切り
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