文鳥とメガバクテリア症(AGY症、マクロラブダス症)
トップ画像:メガバクの正体がカビだと突き止めたちゅん太先生(@Chuntakos5)
メガバクテリア症は比較的新しい病気で、古い文献では書かれていません。
重篤化することは稀であるものの、文鳥にも感染する病気で、消化器系の症状を起こします。
一方で、感染していても無症状の場合があり、無症状の子がキャリアとなってヒナや同居鳥へと感染が拡大してしまうことがあるため、注意が必要です。
マクロラブダスという酵母菌に感染することが原因です。鳥類の胃に感染し、吐き戻し餌やフンの摂食によって感染が拡大します。
酵母菌は真菌の一種なので、細菌(バクテリア)では無いのですが、この病原体が原因で疾病が生じていると判明した1980年代には細菌の仲間であると考えられていたため、メガバクテリア(巨大細菌)症という名前で呼ばれていました。近年では、病原体に付けられた学名を使ってマクロラブダス症と呼ばれたり、AGY(Avian Gastric Yeast:鳥類の胃の酵母)症と呼ばれることも増えています。
最も発症しやすく、重篤化しやすいのはセキセイインコです。カナリアやキンカチョウもセキセイインコ同様の感受性を持っていると言われています。
文鳥でもマクロラブダスが検出されることはあるものの、重篤な障害に至ることは稀であるとされています。
マクロラブダスに感染しても、その発症は宿主の鳥の免疫力に依存しており、生涯にわたって発症しないこともあります。
空気感染や介卵感染はしないものと考えられています。マクロラブダスキャリアである親鳥からヒナへの吐き戻し餌による感染や、キャリアの鳥がしたフンや吐物を同居の鳥が摂食することによって感染が広がっていきます。
メガバクテリア症の症状
マクロラブダスに感染していても、免疫力が正常な間は全く症状を見せないことがあります。この場合、マクロラブダスキャリアとなって同居鳥やヒナへの感染源になります。
他の病気によって弱っていたり、換羽期や育雛期のストレス増大による免疫力低下をきっかけに発症することがあります。
マクロラブダスは胃に生息し、胃炎や消化不良に関連する諸症状が観察されます。
参考:文鳥と胃炎
最も良く見られるのが痩身と体重の減少です。消化不良のため栄養不足になり、筋肉の量が減って痩せ細ります。特に胸筋の萎縮が見られます。未消化便が見られる場合もあるでしょう。
胃炎を起こすと嘔吐や食欲不振が見られます。エサの殻を剥くだけで、実際は飲み込まない「食べたフリ」をする場合もあるようです。
胃の痛みから沈うつや膨羽、前傾姿勢、腹部を蹴るなどの症状を見せることもあります。この膨羽が消化不良による痩身を分かりにくくしてしまうため、発見が遅れることがあります。
症状が進行すると胃から出血を起こし、メレナと呼ばれる黒色の便をすることがあります。出血が著しい場合には、吐物に血が混ざります。
胃出血が慢性的に続いた場合、貧血からクチバシや脚が白っぽく見えるようになります。
上記のほか、下痢や嗜眠が見られることも多くあります。
なお、セキセイインコに限られてはいますが、メガバクテリア症の急性症状が報告されています。
状態の良好な鳥が、突如激しく沈うつになり、 羽を膨らませ、12~24時間以内に死亡します。急性症状を起こした多くの鳥が嘔吐により吐血する事から、急死の原因は 腺胃からの過度の吐血による失血死と考えられているようです。
メガバクテリア症の予防
繁殖場での病原体の根絶が根本的な予防法です。
家庭では、新たに迎えた鳥を検査が終わるまで隔離して、感染の拡大を防ぎましょう。
また、予防ではなくなってしまいますが、日々の食餌と飼育環境を適切なものにして健康を保ち、定期的な検査で発見できるタイミングまで発症させないことも重要です。
画像:健康的で力強い11歳のちゅん太先生(@Chuntakos5)
特に、換羽期や繁殖期にはただでさえ負荷がかかっている状態ですから、無用のストレスを与えないように注意が必要です。文鳥が落ち着いて過ごせる環境を用意して、辛抱強く見守ってあげましょう。
参考:文鳥のケージ設置場所
また、メガバクテリア症で最もよく見られる痩身は、胸筋の減少が顕著です。羽毛で覆われているため、見ただけではなかなか分かりませんので、たまに胸筋を触って健康状態をチェックすることも、早期発見につながる習慣であると言えるでしょう。
参考文献
書籍
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