文鳥とビタミンA欠乏症
トップ画像:ビタミンAの充実で目が輝くぽん先生(@comatsu_cotoLi)
ペレット食やビタミン剤が普及した現在では発症の可能性が減少してはいるものの、シード食の文鳥さんでは引き続き注意が必要なのが「ビタミンA欠乏症」です。
ビタミンAが欠乏すると全身に病状が現れる可能性があり、やっかいです。
食餌に気をつけていれば予防できる病気ですので、しっかり理解して文鳥さんの健康を守ってあげてくださいね。
ビタミンAは脂溶性ビタミンの一種で、様々な生理作用に関わる重要なビタミンです。
「表皮保護ビタミン」であるビタミンAは、細胞組織の成長や修復に寄与しているほか、眼、耳、肌、骨、粘膜などを適切に機能させるために必要です。
若鳥でビタミンAが不足すると、運動障害や歩行困難を起こすこともあります。
ビタミンAは主にプロビタミンAの一種であるβ-カロテンから形成されますが、穀類にはβ-カロテンが含まれていません。
したがって、シード食の文鳥では適切に青菜やビタミン剤が与えられないと、ビタミンAが欠乏します。
ビタミンA欠乏症の症状
ビタミンAは生理作用に関与しており、欠乏症の現れ方も多岐にわたります。
眼疾患
角膜乾燥症、結膜炎、涙管閉鎖による流涙を発症します。
また、夜盲症が発症して夜間視力が衰える場合があります。
参考:文鳥と結膜炎
呼吸器疾患
ビタミンAが欠乏すると後鼻孔乳頭が消失するため、早期の発見に役立てられています。
後鼻孔乳頭とは、口の中の上側にある後鼻孔というスリット状の裂け目の周りを囲んでいるギザギザのことです。
参考:文鳥のクチバシの基礎知識
ビタミンA欠乏症の進行により粘膜の機能が損なわれるため、病原体の侵入が容易になります。
このため、口内炎や喉頭炎を発症しやすく、口の中や舌に「プラーク」という白色の班が現れます。
参考:文鳥と口内炎
症状が更に進行するとプラークが膨張、膿瘍ができてしまい、痛みから食欲が減退します。
また、膿瘍が呼吸の邪魔になるため、呼吸時に異音がするようになったり、開口呼吸を行うようになります。食餌を飲み込みづらくなることもあります。
そのほか、鼻炎や副鼻腔炎を発症し、くしゃみや鼻汁が出たり眼の周りが腫れたりします。
さらに、副鼻腔炎によってクチバシの成長板が障害されるとクチバシの成長不全が生じる場合もあります。
消化器疾患
ビタミンA欠乏症の進行により粘膜の防御が破綻し、口内炎や食道炎、そ嚢炎を発症します。
口腔内にプラークが発生し、進行すると膨張、膿瘍形成が起きます。
口腔内の違和感から、しきりに口や舌を動かしたり、頭を振ったりする様子が見られます。また、食べたいのに食べられない様子や、食欲不振、吐出、餌を飲み込めない、よだれ、口角の汚れが観察されることもあります。
口臭によって気づくこともあります。
食道炎やそ嚢炎が重度になると、痛みから首を伸ばしたような姿勢を取るようになる場合があります。
また、腸炎を引き起こす場合もあり、下痢を生じます。腸炎が起こるとビタミンAの吸収が悪くなるため、悪循環です。
参考:文鳥と腸炎
生殖器疾患
ビタミンA欠乏症により、メスの文鳥では卵塞・難産が引き起こされる場合があります。
床にうずくまる、沈うつ、膨羽、食欲不振、呼吸促迫、イキミによる声漏れなどの症状が観察されます。
参考:文鳥と卵塞(卵詰まり)
腎疾患
ビタミンAの欠乏によって尿細管上皮の角化が進み、尿細管がふさがってしまうことがあります。
これによって尿酸が蓄積して腎機能が障害され、腎疾患に至ります。
嗜眠、食欲不振、多尿などの症状が観察されます。
ビタミンA欠乏症の原因と予防
ビタミンA欠乏症の原因は、文字通りビタミンAの不足、あるいはβカロテンを代表とするプロビタミンAの摂取不足です。
穀類にはビタミンAやβ-カロテンが含まれていないため、シード食の文鳥は青菜やビタミン剤が無いとビタミンA欠乏症になります。
ペレット食の場合、ビタミンA欠乏症を患う可能性は低いでしょう。むしろ、ペレットに加えて、不要なビタミン剤等を与えることによるビタミンAの過剰摂取に注意するべきであると言えます。
ビタミンAの過剰摂取は骨組織の形成異常などを引き起こす可能性があり、注意が必要です。
文鳥の場合は昆虫も食べるので一概には言えないのですが、穀類や野菜しか食べない野生の鳥たちは、直接ビタミンAを摂取する機会はほぼ無いと言っていいでしょう。
野生の鳥たちは野菜に含まれるβ-カロテンから、必要な分だけを体内でビタミンAに変換します。したがって、ビタミンAの過剰摂取は起きません。
一方、飼育されている鳥は野菜だけでなく、ビタミン剤を投与されることがあります。この分量に注意しないと、過剰摂取が起きます。
「じゃあ野菜だけでビタミンA欠乏症を防ごう!」と考えられるかもしれません。もちろん、可能なことですが、毎日たくさん野菜をあげないといけない点には注意しましょう。
セキセイインコの例で恐縮ですが、成鳥のセキセイインコでは1日に小松菜2枚分のβ-カロテンを摂取する必要があります。
シード食でも毎日欠かさず十分な量の野菜をあげられるのであれば、ビタミン剤は不要です。
しかし、その自信が無いのであれば、ペレット食を取り入れるかビタミン剤を与える必要があるでしょう。
なお、文鳥が食べることができて、しかもβ-カロテンを多く含む野菜には、人参、春菊、小松菜などが挙げられます。
参考文献
書籍
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