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文鳥とダイエット

スリムさをアピールするぽん先生
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トップ画像:スリムさをアピールするぽん先生(@comatsu_cotoLi)

文鳥は太りにくい体質をしていますが、それでも肥満になってしまった場合はダイエットが必要になることがあります。

ただし、文鳥のダイエットを人間のダイエットと同じ様に気軽なものと考えてはいけません。

文鳥のダイエットを慎重に行わなければならない理由と、具体的にどのようなダイエット方法があるのかについて学びましょう。

なお、肥満がもたらす病的な症状については下記の講義をご覧ください。

鳥のダイエットを人間と同じ様に考えるのは危険です。特に初めて鳥を飼う人は、「体重が増えてきたからダイエットが必要かな?」と考えてしまう場合もあるでしょう。毎日マメに体重を測る習慣をつけているのは素晴らしいことですが、肥満の判断も、ダイエットの方法も、自己判断でむやみに行うと却って愛鳥の健康を損なう可能性があります。

そもそも、鳥は哺乳類に比べて太りにくい生き物です。飛翔という爆発的な運動を可能にするために常に体温を高く維持しており、高代謝によってカロリーを燃やし続けています。また、体重が増えてしまっては飛ぶのが難しくなってしまいますから、一部の猛禽類を除いて「脂肪を蓄える」ということをしません。

高いエネルギー需要とわずかなエネルギー貯蓄量、すなわち「食べ続けなければ短時間で餓死してしまう」というリスクと引き換えに飛翔を可能にしたのが鳥という生き物なのです。

小型の鳥であるほど上記の傾向は強く現れます。世界最小の鳥と言われるハチドリは、起きている間はずっと餌を探し続けないと数時間で餓死してしまいます。あまりに高い代謝のために、起きている時と同じエネルギー消費を保っていては寝ている間に餓死してしまいます。このため。ハチドリの睡眠は「ミニ冬眠」と呼ばれる深い睡眠になっており、体温を日中の42度から9度にまで激減させることでエネルギーを節約しています。

文鳥やセキセイインコなどの一般的な飼い鳥は、ハチドリほど極端では無いにしても、小型の鳥であることに変わりはありません。「どれくらいで餓死する」という客観的なデータがあるわけではありませんが、一般に半日の絶食で危険であり、丸1日の絶食は元気な鳥でさえ命を落とす危険があると言われています。

人間のダイエットでは食事制限は基本的な減量手法ですが、鳥にとっては命に関わるのです。

肥満の判定

鳥のダイエットに慎重にならなければならないもう一つの理由は、肥満か否かの判定それ自体が難しいという点にあります。

文鳥では、健康な成鳥の標準的な体重は25g程度であると言われています。しかし実際には、25gで太り気味の子もいれば30gを超していても全く肥満とは言えない子もいます。

また、寒さが厳しくなる冬には脂肪が増えますし、産卵期の文鳥もタマゴのために太ります。

肥満の判定には体重のデータだけでなく、体の大きさや年齢、雌雄、季節、病歴、実際の脂肪のつき具合などを総合的に評価する必要があるのです。

愛鳥の体重が増えてきたからといって、飼い主が独断で肥満と診断しないように注意しましょう。急激な体重変化は肥満以外にも、甲状腺腫などの疾患のサインである可能性もあります。

体重の増加、あるいは「なんか太った・・・?」という違和感に気づいたら、まずは主治医に相談するのが飼い主の仕事です。

ダイエット&肥満防止の方法

飼い主が勝手に愛鳥の肥満を診断し、ダイエットを強制するのが危険であることは分かったので、以下では病院で指導されるであろうダイエットの方法および肥満防止の方法を、参考のためにご紹介します。

そもそも「なぜ太るのか?」といえば、摂取するカロリーより消費するカロリーの方が少ないのが原因です。したがって、「摂取するカロリーを減らす」「消費するカロリーを増やす」の2つがダイエットおよび肥満防止の原則になります。

食餌の改善

摂取するカロリーを減らすために、ダイエットにおいては食餌の改善が指導されることが多いはずです。

具体的な指導内容は個々の獣医によって異なるでしょう。ただ、Web上の文献を渉猟した限りでは、日本ではエサの量や与えるタイミングに重きが置かれることが多い一方で、海外の文献ではペレット食への移行が強調される傾向にあるようです。

エサの量の制限は、今回の講義の冒頭で解説したとおり餓死の危険を伴うため、獣医の厳密な指導のもとに行う必要があります。

また、エサの内容の変更も、特にシード食主体の文鳥では慎重に行うべきです。「太るシード」といえば代表的なのはカナリーシードでしょう。しかしながら、アルギニンやアスパラギン酸を筆頭に豊富なアミノ酸を含有する優れた栄養食でもあるのがカナリーシードなのです。

アミノ酸の欠乏や不均衡は成長不良や羽毛の発育不全の原因となります。

ダイエットシードとして、カナリーシードを配合しない混合シードが市販されていますし、それを主食とする文鳥が必ず栄養失調を起こすわけでもありません。しかしながら、これまで栄養豊富な食餌を与えられていた子が急にダイエットシードに変更されると、それをきっかけに病気になる危険があることは理解しておく必要があります。

海外の文献で推奨されているとおり、ペレット食を導入しておくことが、栄養管理に必要な知識が不足しがちな初心者飼い主でも失敗の少ないダイエット方法、あるいは肥満防止法と言えるでしょう。

ただし、完全にシード食だった鳥がペレット食に切り替えるのには手間も時間もかかります。肥満になるレベルで栄養豊富なごちそうを食べていたグルメな子であれば、なおさらです。

無理にペレットを食べさせようとしても絶食の危険があります。これも主治医のアドバイスを受けつつ、辛抱強く取り組む必要があります。

運動不足の解消

繊細な配慮が求められる食餌に関する取り組みに比べると、予防的な取り組みとしても導入しやすいのが運動不足の解消です。

エサやパートナーを求めて日中ずっと飛び回っている野生の文鳥に比べて、どうしてもケージ飼育の文鳥は運動量が少なくなります。愛鳥の健康を保つために、運動量を増やす様々な工夫を試みましょう。

運動不足の解消に最も効果的なのは、単純に放鳥時間を増やすことです。ケージから出た広いスペースで思う存分飛び回ることで、運動量は大きく増加します。

ただし、一人暮らしで家を空けている時間が長い飼い主などは放鳥時間を増やすことが難しい場合もあります。放鳥以外で運動量を確保する方法も検討しましょう。

まずは水浴び器を毎日設置することを徹底しましょう。水浴びは体を衛生的に保つだけでなく、運動としての側面も持っています。

また、小さめのケージを使用している場合は、一回り大きいケージを用意すると運動量も自然に増加します。もちろん、止まり木に十分な高さをつけて、段違いで設置することも忘れてはいけません。

ケージの大きさを変えることに比べると地味ですが、エサ入れと水飲み器とをできるだけ離して設置するという手法もあります。段違いの止まり木のそれぞれの端に設置すると良いでしょう。エサ入れと水飲み器の往復のために、止まり木を飛び移る頻度があがります。

おもちゃに飽きてしまっている場合、新しい物を用意すると運動量が増加します。新しいブランコ、鏡などを試してみましょう。インコと違い文鳥は「噛むオモチャ」はあまり好まないと言われていますが、止まり木から噛み付いて引っ張ったりできる軽いものであれば楽しく遊ぶことができます。

新しいオモチャに定期的にチャレンジすることは飼い鳥の生活に適度な刺激を与え、毛引きや羽咬症などの問題行動の予防に効果があると考えられています。運動不足の解消にも病気の予防にも繋がりますので、習慣として取り入れると良いでしょう。

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