文鳥と肺炎
トップ画像:昼休み明けの講義に臨むちーすけ先生(@hazuki25rinko)
肺炎は治療しても予後が悪いことが多いため、早期発見が重要です。
しかし、初期段階では運動後のような限られた場面でしか呼吸困難症状を見せないことが多く、注意していなければ気づくことが難しい疾病でもあります。
肺炎の症状を知っておくとともに、そもそも肺炎にならないように予防を徹底しましょう。
病原体の感染による場合と、毒物や異物による場合とがあります。
感染性では、細菌感染のほか、真菌(カビの仲間)の感染によって肺炎を起こします。
真菌の場合はほとんどがアスペルギルスによるもので、稀にカンジダなどの他の真菌が原因になる場合があります。
寄生虫性肺炎も稀に発生し、キノウダニやトリコモナスによって起こります。
このほか、稀にウイルス性肺炎を起こすこともあります。
非感染性の肺炎では、中毒性の気体を吸入することが原因となります。
特に重度の肺炎の原因としてしばしば見られるのが「ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ガス」です。フライパンのコーティングを代表に、様々な焦げつき防止表面に使用されるフッ素樹脂です。
このポリテトラフルオロエチレンが高温にさらされることにより有毒ガスを生じ、微量でも体の小さな鳥は肺炎その他の症状を見せる場合があります。
このほか、タバコの煙やスプレー類の使用、自宅あるいは近隣マンションの外装工事など、刺激性・中毒性ガス全般に注意が必要です。
さらに、誤嚥によって肺炎を起こすこともあります。挿し餌の際に誤って流動食を気管内に注入してしまったり、保定などによって息が荒くなった状態で薬剤を経口投与したりすることによって、誤嚥性肺炎を生じます。
また、卵巣や卵管から腹腔内に落ちた卵材が気のうを経て肺に流入し、誤嚥性肺炎に似た肺炎を起こす場合が稀にあります。
肺炎の症状
軽度の肺炎の場合、運動や保定などで負荷がかかった際に開口呼吸や呼吸促迫などの呼吸困難症状が現れます。
参考:文鳥と開口呼吸
この時点では元気や食欲などには変化が見られないことが多く、注意していなければ異常の発見は難しいでしょう。
病状が進行すると、スターゲイジング(空気の通りを良くするために顎を上げて上を見ている姿勢)やチアノーゼ、起立困難、意識低下などの重度の呼吸困難症状ととも、呼吸音が聞こえるようになったり、咳や痰が見られることがあるでしょう。文鳥のクチバシの赤色は血液の色を良く反映しているため、チアノーゼを起こすとクチバシが蒼白になります。
上記の症状が安静時にも見られる場合、肺炎は重度になっていると考えられます。肺出血を起こして喀血する場合もあります。
肺炎の予防
肺炎は、気管炎や気のう炎などの他の下部気道疾患に比べて予後が悪いことが多いため、予防と早期発見が特に重要です。
感染性肺炎の予防には、病原体に負けない健康な体を作るための食餌と規則正しい生活、そして衛生的な飼育環境が重要です。
栄養面ではビタミンAが欠乏すると様々な感染症へのリスクが高くなります。また、肺の表面の角化が亢進し、肺が直接障害される場合もあります。青菜やサプリメント、ペレットなどで十分な量を摂取しましょう。
参考:文鳥とビタミンA欠乏症
画像:文鳥欠乏症の飼い主を見上げるちーすけ先生(@hazuki25rinko)
肺炎の原因となる病原体、特にアスペルギルスやカンジダのような真菌は、不衛生な環境で増殖します。こまめにフンを掃除し、換気も欠かさないように注意しましょう。また、定期的にケージ全体を清掃することも忘れてはいけません。高温多湿の状態が続く梅雨には、清掃の重要性は高まります。
非感染性肺炎の予防には、誤嚥とガスに注意する必要があります。
ヒナの挿し餌は、誤嚥性肺炎の他にも様々な疾病の原因となる場合があるため、適切に作った挿し餌を適切な方法で与える必要があります。ヒナから育てる場合には毎日行うことになる挿し餌ですが、細心の注意を必要とする非常にデリケートな行為であることを忘れないでください。
文鳥が刺激性・中毒性ガスを吸引しないようにするために、まずはキッチンの近くにケージを置かないようにしましょう。
参考:文鳥のケージ設置場所
フッ素樹脂コーティングされた調理器具を使う場合はしっかり換気することも重要です。また、文鳥の近くでタバコを吸ったり、スプレー類を使用してはいけません。屋外で行うか、文鳥からは離れた部屋で十分に換気しながら行うべきです。
一方で、近隣の外装工事などで使用された塗料が原因で、オカメインコのような文鳥よりもはるかに大柄の鳥が落鳥したと考えられる事案が、Web上で報告されています。
こうした場合、換気のために窓を開けているとかえってガスが入ってきてしまうため、部屋を締め切って文鳥を窓から離すなどの対応が必要になると考えられます。
参考文献
書籍
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