文鳥と水浴びの基本ルール
トップ画像:ちょっと乾いてきたぽん先生(@comatsu_cotoLi)
文鳥の水浴びのさせ方や、水浴びの注意点など、飼育管理の観点から水浴びを考えます。
水浴びの頻度や時間帯、水浴び器の注意点など、網羅的に解説しています。
なお、今回の内容は健康な成鳥を前提としています。病気の鳥や高齢の鳥、換羽期や産卵期の鳥については、別の講義で注意点を確認します。
水浴び自体の意義については下記の講義で解説していますので、あわせてご覧ください。
参考:文鳥と水浴び
水浴びの頻度は文鳥自身に任せるのが良いとされています。飼い主は文鳥がいつでも水浴びをできるようにしてあげましょう。水の鮮度や水浴び器の汚れには注意する必要があります。
一般に、砂漠種の鳥は水浴びをあまり好みませんが、高温多湿なインドネシアを原生地とする文鳥はとても水浴びを好みます。
毎日水浴びをする文鳥が多く、夏場には日に何回も水浴びを行う様子も見られるでしょう。冬場には水浴びの頻度や浴びている時間が短くなり、文鳥が自分で調節していることがよく分かります。
なお、多くの文鳥が毎日水浴びをしますが、「絶対に毎日水浴びをしなければならない」というわけではありません。文鳥にも様々な性格の子がいますから、あまり水浴びが好きではない子もいます。好きではない子は、2日に1回とか、週に数回といった頻度で水浴びをすると思いますが、それはそれで問題ありません。飼い主はいつでも水浴びできる状態だけ整えて、タイミングは文鳥自身に任せましょう。
飼い主が無理やり水浴びをさせようとして怖い思いをしたり、不適切な水浴び器で溺れそうになった経験がある文鳥は、極端に水浴びを嫌うようになる可能性があります。水浴びを全く行わない、あるいは極端に頻度が少ない場合は、皮膚が乾燥して皮膚炎になりやすくなったり、体が不衛生になって細菌や真菌(カビ)への感染リスクが高まったりします。ストレスから毛引きや羽咬症が見られる場合もあります。
極端に水浴びを嫌っている文鳥は専門医に相談して、少しずつ水浴びに慣れてもらうようにしましょう。
水浴びの時間帯
水浴びを行う時間帯についても、基本的には文鳥に任せて大丈夫です。強いて言えば、日中の気温が高くなり水温が上がった時間帯が望ましいとされています。反対に、気温が下がった夜、特に寝る前に水浴びを行うのは避けた方が良いとされています。
野生の文鳥は、日が高くなって水温が上がる昼過ぎに水浴びを行うことが多いようです。一方で、外に比べて気温の変化が少ない屋内で飼育されている文鳥は野生の文鳥に比べると様々な時間帯に水浴びを行おうとします。
多くの文鳥は自分にとっての水浴び時刻が決まっており、いつも昼過ぎに水浴びする子もいれば、夕方にならないと水浴びしたがらない子もいるでしょう。ただ、このタイミングは季節に応じて変わることが多く、決まった時間帯しか水浴び器が設置されていないというのは文鳥にとって不都合です。
飼い主は文鳥がいつでも水浴びができる環境を用意して、1日のどの時刻でも文鳥が水浴びできるようにするのが基本です。
ただし、夜や寝る直前に水浴びする子には注意が必要です。夜は室温が下がっていることが多く、より大きく体温を奪われてしまいます。また、人間と同様に文鳥も水浴び後はしっかり体を乾かしてから寝ないと体温が下がりすぎて病気にかかりやすくなります。
したがって、夜や寝る前に水浴びしたがる子はしっかり体が乾くまで飼い主が見届けるか、そもそも夜には水浴び器を設置しないようにしましょう。
使用する水
水浴びに使用する水は基本的には水道水で構いません。新鮮かつ清潔な室温程度のぬるい水がよく、溜め置きした水やお湯を使ってはいけません。水は毎日交換し、雑菌が繁殖しやすい梅雨や夏には日に数回交換すると安心です。なお、シャンプー等の洗剤の使用は厳禁です。
水道事情は各地域によって異なるため断定は不可能ですが、基本的には文鳥の水浴びに使用する水は水道水をそのまま使って問題ありません。カルキ抜きなどの処理も特に必要ありません。そのままの水道水を利用することに抵抗がある場合は、浄水器を通したり、ミネラルウォーターを使用したりしても構いませんが、水道水よりも雑菌が繁殖しやすい点には注意しましょう。
なお、鳥にミネラルウォーターを与えることの是非については様々な意見があります。「ミネラルウォーターには不純物が無いから安心」「塩素が残してある水道水の方が雑菌が繁殖しづらくて安心」「水道水は水道法で厳格に規制されているが、ミネラルウォーターは食品衛生法の管轄で基準が緩いから危険」「食品衛生法も十分厳しい基準だから大丈夫」「軟水がよい」「硬水でも大丈夫」などなど。
この点、ミネラルウォーター文化が普及している海外の文献を渉猟したところ、鳥に与える水についての記述は一様に「清潔で新鮮な水」であり、ミネラルウォーターであるか否か、硬水か軟水かなどについてはあまり気にしていない様子が伺えます。水への高い関心は、水道水にさえ飲めるレベルの品質を求める日本特有の現象なのかもしれません。
なお、「ミネラルウォーターを鳥に与えると結石になる」という説がありますが、鳥の専門医はこれに否定的な見解を示しています。
水の温度については、温水は厳禁であり、室温程度のぬるい水が良いとされています。冷水でも文鳥は思い切って飛び込んでいきます。水道水の水温が高く、室温が高い夏場には出したばかりの冷水でも問題ないことがほとんどですが、冬の凍るような水と低い室温は文鳥の体温を著しく奪い負荷が大きくなるため、避けたほうが無難です。とはいえ、水浴び器に水を入れておけば自然と室温に慣らされていきますから、飼い主が特に意識しなくても適温になっていることが多いでしょう。
また、蛇口から出る水で直接水浴びさせる行為、いわゆる「打たせ湯(湯ではありませんが・・・)」が推奨されない理由も、水温に求めることができます。
打たせ湯(水)を楽しむ文鳥さんの様子
文鳥自身は打たせ湯を楽しんでいることも多いですが、蛇口から出たばかりの水は冷たすぎたり熱すぎたりして、適温に調節するのが難しい場合があります。水流が直接文鳥にかかることで体が濡れすぎて体温を失ってしまう危険があることもよく指摘されます。さらに、人間の住環境における水回り、つまりキッチンや洗面台には文鳥にとって危険なものがたくさんあります。特にキッチンは洗剤はもちろん、まだ熱いコンロや有毒な食べ物など、家の中で最も危険な場所と言っても過言ではありません。
打たせ湯は文鳥自身が楽しんでいる場合があること、それ自体が致命的な危険を持つわけではないこと、水の鮮度という観点からは最も信頼できることなどから、必ずしも否定するものではありません。しかし、水温や周囲の環境に特に注意を払い、濡れすぎないようにすることを忘れないで下さい。また、料理中や料理直後のキッチンへ文鳥を連れて行くことが無いようにすることも厳守すべきです。
温水が厳禁である理由は、羽に塗布された油脂が取れてしまうことで羽毛が過剰に水分を含んでしまい、乾かすのに時間がかかって体温を余計に失ってしまうためです。冬でもお湯は使わず、あくまでぬるい「水」を使うようにしましょう。なお、シャンプー等の洗剤を使用してはいけないのも、中毒の危険があることは言うまでもなく、油脂が落ちてしまうというのも理由のひとつなのです。
参考:正羽-翼に生える立派な羽
最後に、長時間放置された水は雑菌や寄生虫が非常に好む場所になります。水浴び器の水は必ず毎日交換しましょう。
ケージ内での水浴び
文鳥がケージ内にいる時に使う水浴び器としては、下記のような外付け式のものが扱いやすいでしょう。
どちらの水浴び器もタテに開くスライド扉がついたケージに取り付けることができます。SANKO(三晃商会)の水浴び器は扉の開口部がタテ85mm以上、ヨコ60mm~95mmになっているケージに取り付けることができます。スドーの水浴び器は、扉の開口部がタテ80mm以上、ヨコ80mm~110mmのケージに設置可能とのことです。
外付け式の他に、下記のような床に置くタイプの昔ながらの水浴び器も存在します。
特にこだわりが無ければ、外付け式の水浴び器を使うのが良いでしょう。
外付け式の水浴び器は、ケージ内に手を入れなくても簡単に水を交換することができます。ケージ内は特になわばり意識の強い場所であり、よく人に慣れた文鳥でさえケージ内に入ってくる手を攻撃することがあります。ケージ内に手を入れなくても水浴び器を外すことができ、水を新鮮で衛生的に保つことができるのは重要なポイントです。
また、外付け式の水浴び器は水の飛散が最小限に抑えられるため、ケージ内の衛生状態を良好に保ちやすくなります。水に濡れた場所は雑菌が繁殖しやすく、特にエサ入れに水がかかるとエサの腐敗が進んで消化器系の病気になるリスクが高まります。
参考:文鳥とそ嚢炎
また、床に置くタイプの水浴び器を使う場合、水にフンが入らないように位置を調節する必要があり、ケージも大きめのものが必要になります。外付け式の場合はそのような心配がなく、小さなケージでも問題なく使用することができます。
水浴び器も含め、ケージのレイアウト全般については下記の講義をご覧ください。
なお、水浴び器は毎日しっかり洗い、よく乾燥させましょう。日々の手入れが必要なため、水浴び器には上記のようなシンプルなものが良く、装飾のあるものは避けるべきです。
外付け式のものは上下に分解できるので、分解して隅々までしっかり洗うことができます。
ケージ外での水浴び
放鳥時にケージの外で水浴びするのを好む子もいます。
ケージの外で使う水浴び器については、特にこれというものがあるわけではありません。「ケージ内での水浴び」の項で紹介した外付け式水浴び器をケージから外して安定した平面に置いておけば、それで足ります。床に置くタイプの水浴び器なら、そのまま外で使えるでしょう。少し深さのあるお皿に水を入れても構いませんし、シンクや洗面ボウルに水を溜めても可能です。
ただし、お皿やシンク、洗面ボウルを使う場合、つまり鳥専用の水浴び器以外の道具を使う場合は、いくつか注意しなければならないポイントがあります。
まず、道具が衛生的で洗剤などの残留物が無いことを確認しましょう。人間の料理のカスや食器洗い用洗剤が残留しているお皿や、きれいに保たれていないシンクや洗面ボウルで水浴びさせてはいけません。また、水浴び後には文鳥が使った道具を良く洗いましょう。文鳥だけでなく、飼い主やその家族の健康を守るためにも、鳥と人間が共通の道具を使う場合はしっかり洗浄することが重要です。
次に、水の深さに注意しましょう。人に慣れた文鳥は飼い主を信頼していますから、促されれば深い水に飛び込んでしまい、溺れる可能性があります。「ケージ内での水浴び」の項で紹介したものを代表に、小鳥用の水浴び器はそこまで深く水を入れることができないように、さり気なく工夫されています。小鳥用の水浴び器を使っていれば、初心者が意識することなく水を張っても、溺れる程の水量にすることはできないのです。一方で、深い皿やシンク、洗面ボウルでは、飼い主が注意して深くなりすぎないようにする必要があります。一般に、1cm~2cmの水深があれば十分です。
お皿を水浴び器として使う場合は、十分に重さのある陶器製のものを利用しましょう。文鳥は水浴び時に激しく震えますから、軽いものではひっくり返る危険があります。
シンクや洗面ボウルを使う場合、周囲に危険なものが無いか改めて確認しましょう。洗面台の石鹸をかじってしまうかもしれませんし、キッチンに置いてあるアボカドを食べて中毒になるかもしれません。
参考:文鳥とアボカド中毒
調理後のキッチンにはフッ素ガスが残留しているかもしれません。まだ熱いコンロに飛び乗ってヤケドしてしまうかもしれません。
以上、様々な危険があるので、こだわりが無ければ文鳥専用の水浴び器をそのままケージ外でも使うのが無難です。
水浴び後の注意
水浴びは、しっかり乾かしきるまでが水浴びです。とはいえ、放っておいても文鳥自身で体を震わせて水を飛ばしたり、クチバシで手入れするので、乾かすという点で飼い主がやることはありません。夜に水浴びをした場合に、きちんと乾かしたのを確認してから寝かせるように気をつける程度です。
なお、ネット上にはドライヤーで体を乾かす文鳥の様子が紹介されていたりします。
ドライヤーで体を乾かす文鳥さんの様子
大変可愛らしいのですが、文鳥は体温変化に敏感なのでドライヤーでの乾燥は避けた方が良いでしょう。
海外では大型の鳥をドライヤーで乾かすこともあるようで、ドライヤーを使う場合の注意点が紹介されています。それによると、「ドライヤーを使った乾燥は鳥に過剰な熱を与えてしまう危険があるため、離れた位置から優しく温風を当てるように」とのことです。
しかし、言うまでもなく文鳥は小型の鳥です。ドライヤーが無くても比較的短時間で乾きます。熱を受ければすぐに体が熱くなってしまいます。逆に、冷風を受けてもすぐに体を冷やしてしまいます。少ない水と大量の水とで、水温の変化に要する時間が異なることを考えれば、特に化学の知識が無くても、小型の文鳥の体温が変わりやすいことが直感的に分かるはずです。
それでもドライヤーで乾かすというのであれば、温度調節に細心の注意を払いましょう。また、ドライヤーが発する音に驚く文鳥さんが多いでしょう。怖がったり嫌がったりする文鳥に無理やりドライヤーを当てるようなことは止めましょう。
さて、乾燥自体については文鳥に任せておけばよいのですが、気温の管理は飼い主の仕事です。水浴び後に低い気温に置かれると体温を大きく奪われますから、注意が必要です。
ケージ内で水浴びした後はそのままケージ内で乾かしますから、問題無いことが多いでしょう。ケージの温度管理は飼育管理の基本中の基本であり、多くの飼い主が徹底しているからです。
特に注意すべきはケージ外で水浴びをした後です。室温で乾かすことになりますから、冬はもちろん、夏でもクーラーで部屋が涼しくなり過ぎていないか注意しましょう。エアコンや扇風機の風が直接当たらない位置に移動することも忘れてはいけません。
文鳥の体温は、手乗りの子であればクチバシ・足を触って感じ取ることができます。水浴びをした直後は、ひんやりと感じるかもしれません。指や手のひらに文鳥さんを載せていると、羽毛が乾いてくるにしたがって、接しているクチバシや足がぽかぽかしてきます。人間がクチバシや足を暖かく感じる頃には、濡れそぼっておとなしくしていた文鳥も、目がパッチリと開いて、普段通り元気に動き出すでしょう。
参考文献
書籍
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