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文鳥はクリッピング(羽切り)するべき?

風切羽を披露するぽん先生
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トップ画像:風切羽を披露するぽん先生(@comatsu_cotoLi)

クリッピングの是非については、一般の飼い主から専門家まで様々な見解があり、意見が真っ向から対立することも珍しくない論点です。

しかしながら、鳥を飼うのであれば「愛鳥にクリッピングを施すべきなのか」という問題は避けては通れません。

今回は、クリッピングのメリット・デメリットを冷静に検討しつつ、「では文鳥はクリッピングするべなのか?」という一大テーマに迫ります。

最初に、そもそもクリッピングとは何かという点について確認しておきましょう。

クリッピング(羽切り)とは、翼に生えている風切羽の一部を切除することを指します。飼い鳥の飛行能力を無くしたり、低下させたりすることを目的として行われています。

鳥を扱っている病院で飼い主がクリッピングを希望すれば処置を受けることができます。

注意が必要なのは、翼自体を切るのではなく、翼に生えている羽の一部を切る処置であるということです。人間で言えば、「指を切るわけではなく爪の一部を切る処置」といったところでしょう。

したがって、クリッピングされる鳥に痛みはありません。「人間に掴まれて大事な羽に何かされる」という意味で、保定に伴う不快感や緊張、恐怖はありますが、クリッピング自体が痛みを伴う処置であるというわけではありません。

また、クリッピングによって切断された羽は生え変わりのタイミング抜け落ちて、新しい羽が再び伸びてきます。この羽の生え変わりのタイミングを「換羽(かんう)」と呼びます。

クリッピングによる飛行能力の低下は次の換羽で新しい羽が生えてくるまでであり、生涯飛べなくなるわけではありません。

最後に、「クリッピング=完全に飛べなくなる」ということでは無いという点も抑えておきましょう。

風切羽を切る位置や枚数を調節することにより、完全に飛べなくすることもできれば、高く飛び上がれない程度に調節することもできます。クリッピングの程度にも様々なバリエーションがあるのです。

飼い鳥のクリッピング論争

「愛鳥にクリッピングを施すべきか否か?」は、鳥の飼い主の間で最も論争になる話題のひとつであると言ってよいでしょう。

「鳥から飛ぶことを奪うのは虐待だ」と言う人もいれば、「クリッピングこそ飼い鳥の安全を守り、長生きのために必要なのだ」と言う人もおり、時にヒートアップした激論が交わされることもあります。

統計的な調査があるわけでは無いので印象の域を出ませんが、日本の状況を見ると、日本の飼い主は自然志向的な傾向が比較的強いということもあり、英語圏の飼い主に比べて、クリッピングには否定的か懐疑的である人が多いようです。

その日本の鳥の飼い主コミュニティの中でも、インコ・オウムの飼い主は比較的クリッピングを行っているのに対して、文鳥も含めたフィンチの飼い主はクリッピングに反対する傾向が特に強いように思われます。

クリッピングという行為に対して個々の飼い主がどのような感想を持ってもそれは自由です。個人の感性や倫理観についての話は、今回の講義からは切り離したいと思います。

冷静にクリッピングのメリットとデメリットを比較することで、「飼い鳥はクリッピングによって恩恵を受けることができるのか?」という点について、特に「文鳥はクリッピングするべきなのか?」ということについて、考察していきましょう。

クリッピングのメリット

まずは、クリッピングのメリットとしてよく言及されるポイントを確認していきます。

迷子の防止

外へ逃げていって迷子になってしまうのは、全ての飼い鳥につきまとうリスクです。どんなに飼い主に懐いている鳥も、ちょっとした好奇心や何かに驚いた拍子に、開いている窓やドアから飛び出していってしまいます。

人間の手で育てられた鳥たちは、飼い主の下を離れて生きていくことはできません。迷子になってすぐ誰かに保護されればよいのですが、そうでなければ野良猫やカラス等の襲撃を受けて死亡したり、餌を得ることができずに餓死したりしてしまいます。

そのような迷子のリスクを根本的に無くすことができるという点で、クリッピングにはメリットがあります。

飛行に伴う事故の防止

自由自在に飛んでいる鳥たちを見ているとつい忘れてしまいますが、飛行中の事故は決してすくなくありません。

優れた体制感覚と視力を有する鳥であっても、突然開くドアや物陰の家具に激突する危険があります。窓や鏡は通り抜けられると思って、真正面から激突してしまうこともあるでしょう。

飛行中の事故はスピードが乗っている分だけ衝撃も大きくなり、致命傷を負いやすくなっています。

クリッピングによって飛行能力を制限すれば、これらの事故のリスクを低減できます。

また、移動の自由が制限されることにより、熱した鍋などに飛び込んでしまう事故も防止しやすくなるでしょう。

ケージに帰しやすくなる

多くの飼い鳥はケージから出られる放鳥タイムを楽しみにしています。飼い主が「そろそろケージに戻って欲しい」と思っても、そうそう思い通りにはいきません。

思うように戻らないからといって、追いかけたりしてはいけません。怖がった鳥が飛んで逃げている内に家具に衝突したり、飼い主が掴もうとした拍子に強く握りすぎてしまう等、追いかけるのは事故の元です。

特にケージに戻ろうとしない子の場合、クリッピングによって飼い主が穏便に捕まえやすくなるため、お互いのストレスを軽減することができます。

人に慣れやすくなる

クリッピングによって飛行能力を失えば、鳥が飼い主に依存する時間が増えます。

飼い主に依存して生活している内に、「人間と一緒に居ると良いことがある」と覚えてくれることでしょう。

あまり人に懐かない種類の鳥や、人馴れしていない子をしつけるために、クリッピングが有効である場合があります。

家を汚さなくなる

クリッピングによって飛行能力を失い、飼い主と一緒に居る時間が長くなることで、飼い鳥が家を汚しにくくなります。

飛び回ってフンであちこちを汚すということも無くなりますし、飼い主の手の届かないところで家具や壁紙をかじったりすることも無くなるでしょう。

クリッピングのデメリット

クリッピングのメリットの次は、デメリットを確認していきましょう。

運動不足になる

飼い鳥は野生の鳥に比べて、ただでさえ運動不足になりやすいと言われています。

一日のほとんどを餌探しに費やして飛び回っている野生の鳥に比べて、いつでも餌を食べることができ、狭い家の中を遊び程度に飛んでいる飼い鳥では、運動量の違いは明らかです。

クリッピングによって飛べなくなったり、飛びにくくなったりすることで、運動不足に陥る可能性は高まります。

運動不足は肥満を招き、脂肪肝を代表とする様々な病気の原因となります。

また、鳥は常に体温を高く保っていますが、運動不足によって主要な発熱器官である大胸筋が痩せてしまうと、体温保持に問題が生じる可能性があります。体を冷やすことは、臓器の機能低下や病原体に対する抵抗力の喪失に直結し、非常に危険です。

このクリッピングによる運動不足は、特にフィンチのような小型の鳥において顕著な悪影響を与えると考えられています。

例えば大型のインコやオウムは、野生下においてもいつでも飛び回っているわけではありません。屈強な脚を活かして木の上を自在に歩き回って過ごしています。彼らが飛ぶのは、別のエリアへと長距離を移動するためです。

こうした大型の鳥に対して、小型の鳥はちょっとした距離でも常に飛び回っています。

また、飼育下の鳥においても、インコ・オウムが脚力を活かしてケージの壁や天井までも自由自在に動き回って運動できるのに対して、そこまで脚力が強くないフィンチはほとんど運動できなくなってしまいます。

鳥本来の行動が損なわれる

鳥の体の全ては飛ぶことのために存在していると言っても過言ではないでしょう。

骨格や筋肉はもちろん、中枢神経や感覚器、呼吸器、消化器に至るまで、あらゆる部位の形状と機能が、飛翔のために最適化されています。

クリッピングによって、鳥にとって最も重要な「飛翔」を制限し、あるいは奪うことによって、飼い鳥にどのような影響を与えるのかは未知数です。

自由に飛べていた大人の鳥にクリッピングを施すと、飛べなくなったことに驚き、ストレスから毛引きや羽咬症を起こしてしまう場合があります。

精神的にも肉体的にも、クリッピングが飼い鳥に与える影響は少なくないでしょう。

床にいることに伴う事故が起こる

クリッピングによって飛行能力を制限されることにより、鳥が床に降りている時間は必然的に長くなります。

鳥は床に降りてもすばしっこく動き回っており、飼い主が踏んでしまうリスクはクリッピングによって高まると言えるでしょう。

また、犬やネコなどの同居動物から襲われるリスクも高まります。クリッピングされた鳥は恐怖を感じても飛んで逃げることができず、襲われることが直接ケガにつながらなくとも、強度のストレスによる精神的な病を発症する可能性があります。

落下の危険がある

飛べなくなった鳥は、もともと飛べない生き物以上に落下によるケガのリスクがあります。

これまでどおり飛べると思って高所から飛び出してしまったり、急に飛びづらくなった体をうまく制御することができずに墜落したりする危険があります。

こうしたケガを予防するため、クリッピング直後は特に飼い主が注意して鳥の様子を見守る必要があります。

見た目が損なわれる

クリッピングは翼に生えている風切羽を切るため、見た目に影響を与えます。

翼を閉じている時の容姿も変わってしまうため、特に模様の美しい鳥においては、見た目の痛々しさが強調されてしまうかもしれません。

文鳥はクリッピングするべきなのか?

ここまで、クリッピングのメリットとデメリットを詳細に確認してきました。

では、話を文鳥に限定しましょう。果たして文鳥はクリッピングするべきなのでしょうか?

上記のメリット・デメリットから合理的に考えれば、「一般論としては文鳥にクリッピングを行うべきではない」という結論に至るでしょう。

まず、文鳥は小型のフィンチであり、フンは拭けば簡単に取れますし、噛む力も強くないため家具や壁紙を損傷させることもあまりありません。したがって、クリッピングのメリットである「家を汚さなくなる」は、そもそも文鳥においては関係の無い話です。

また、日本において文鳥は「手乗り文鳥」として育てられることが多く、そうでない場合でも家の中で飼育されており、人によく慣れています。手乗り文鳥は特に顕著ですが、彼らは放鳥時にも飼い主にべったりくっついて離れない場合が多々あります。

したがって、クリッピングのメリットである「ケージに帰しやすくなる」「人に慣れやすくなる」についても、文鳥にはあまり縁のない論点です。「迷子の防止」という点についても、「窓が開いていたけど、文鳥が飼い主から離れなかったので助かった」という飼い主は少なくないでしょう。クリッピングされなくとも、そもそも家から飛び出しにくいというわけです。

さらに文鳥は、飼い鳥の代表として言及されることの多いセキセイインコに比べて、飛行速度はゆったりとしています。セキセイインコの一瞬にして視界から消えてしまうような鮮やかでキレのある飛行に比べると、文鳥の飛行はバタバタゆっくりといった印象です。

そもそも飼い主からあまり離れず、飛ぶスピードも速くないという特徴が重なって、文鳥は他の飼い鳥に比べれば「飛行に伴う事故」の危険性は相対的に低いと言えるでしょう。

もちろん、事故のリスクがゼロであるわけではありませんし、文鳥の飼い主も十分に注意を払うべきであることに何ら変わりはありませんが、「クリッピングのデメリットを甘受してまで飛行に伴う事故の心配をすべきである」ということにはならないでしょう。

ここまで述べてきたように、文鳥はクリッピングから得られるはずのメリットをあまり享受できない一方で、デメリットは深刻になります。

特に「運動不足になる」というデメリットは無視できません。飼い主にべったりの手乗り文鳥は飛べたとしても運動不足になりやすいわけですから、クリッピングによってその傾向を助長することになってしまいます。

また、「床にいることに伴う事故が起こる」というのも、飼い主と付かず離れず一緒に居ることの多い文鳥から「ピンチの時に飛んで避ける」という手段を奪ってしまうことになり、深刻なデメリットであると言えるでしょう。

上記のように考えると、「一般論としては文鳥にクリッピングを行うべきではない」という結論に到達します。

ここで「一般論としては」というのは、同じ文鳥でも飼育環境は様々であることを想定しています。

例えば、「ワンルームで文鳥を飼育しており、キッチンと文鳥のスペースとを隔離できない」という場合には、デメリットを受け入れてもなおクリッピングした方が安全性が高まるかもしれません。

「そもそもそんな環境で文鳥を飼うべきではない」という意見もあるでしょうが、一度預かった命には何があっても責任を負うのが飼い主の務めである以上、「そもそも論」はナンセンスです。

いま文鳥と飼い主が置かれている環境を考え、リスクを分析し、その結果としてクリッピングを行うことに利益があるという結論に到達したのであれば、それは正当であると言えるでしょう。

教条的に「クリッピングは不要」と考えるのではなく、一般論を理解した上で「ではウチはどうすべきなんだろうか」と頭を悩ませ続けることが、飼い主として健全なあり方ではないでしょうか。

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